10 財産分与

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10 財産分与

(1) 財産分与の意義

 夫婦(内縁関係を含む。)が婚姻中(内縁期間中を含む。)に形成した財産は原則として夫婦が協力して形成されたものと扱われます。

財産分与は,夫婦の離婚に伴って生じる,婚姻中に形成した財産の生産や離婚後の扶養等を処理するものです。


財産分与には,以下のものが含まれます。

① 清算的財産分与

② 扶養的財産分与

③ 慰謝料的財産分与

④ 過去の婚姻費用及び過去の養育費の未払分の清算としての財産分与


① 清算的財産分与」は,婚姻中に形成した財産を清算するもので,単に財産分与という場合,この清算的財産分与を指すことが多くなっています。

清算的財産分与では,それが夫婦の一方の特有財産であることが明らかでない限り,原則として夫婦が協力して形成されたものであり,形成についての寄与や後見の程度も原則として平等であるとされます。


 「② 扶養的財産分与」は,仕事等をしている収入の多いほう(多くは夫)が仕事等をしていない収入の少ないほう(多くは妻)に,離婚後経済的に自立できるだけの間の生活費を負担させるべきというものです。

清算的財産分与や離婚に伴う慰謝料が発生するような場合にはこれらにより離婚後の生活が確保できるので,扶養的財産分与は認められない扱いとなっています。


 「③ 慰謝料的財産分与」とは,財産分与に離婚慰謝料を含ませるものですが,実務上,慰謝料の問題は別途対象となっているので,財産分与の際に考慮することはほぼありません。


 「④ 過去の婚姻費用及び過去の養育費の未払分の清算としての財産分与」とは,財産分与の際に過去の婚姻費用や過去の養育費が未払であることを考慮するものです。


(2) 財産分与の請求方法

 夫婦関係調整(離婚)調停や離婚訴訟の中で財産分与を請求すれば,夫婦関係調整(調停)や離婚訴訟の中で財産分与の問題についても取り上げられます。

なお,夫が離婚請求訴訟を提起しその中で財産分与を求めていないというような場合,離婚について夫婦間で和解が成立せずに離婚を認める判決が下されてしまうと,離婚請求訴訟手続においては財産分与について判断されないこととなってしまいます。
 この場合,妻のほうでは,離婚自体を争いつつ,離婚を認める判決が下されることに備えて予備的反訴を提起しその中で財産分与を求めておく必要があります。


  離婚成立までに財産分与を求めていなかった場合,離婚後2年以内であれば,財産分与を求めることができます(民法第768条第2項ただし書)。

内縁関係解消に伴い財産分与を求める場合も同様です。
 この場合,任意交渉で財産分与がまとまらない場合,財産分与調停を申し立てる必要があります(なお,法律上,財産分与審判を求めることも可能ですが,調停に付されることがほとんどで,審判を申し立てる意味はほとんどありません。)。


(3) 清算的財産分与の対象財産の確定についての基準時

清算的財産分与においては,夫婦が婚姻生活中に形成した財産が対象となることから,対象財産の確定についての基準時は,原則として,夫婦間における経済的な共同関係が消滅した時点となります。
 通常は離婚や内縁関係解消に先立ち別居が先行するので,別居時点が対象財産の確定についての基準時となり,その時点の財産が清算的財産分与の対象となります(なお,別居することなく離婚や内縁関係解消が成立した場合には離婚時や内縁関係解消時が基準時となります。)。
 このように,別居した時点がいつかが重要となるので,その別居開始日がいつであるのかということで争いになることが多くなっています(なお,別居からどれほど期間が経過したかが重要な離婚原因となっているので,別居開始日がいつであるのかという点については,離婚原因との関係で争われることも多くなっています。)。
 夫婦関係調整(離婚)調停や離婚訴訟で別居開始日がいつであるかについて当事者間に争いがある場合,その2時点における財産分与の資料を提出することが求められます。
 例えば,別居開始日について原告が平成27年1月1日,被告が令和2年4月4日と主張しているような場合,平成27年1月1日時点の財産の資料と令和2年4月4日時点の財産の資料の双方の提出を求められます。


(4) 清算的財産分与における対象財産の評価についての基準時

清算的財産分与における対象財産の評価をいつの時点で行うかというのが,対象財産の評価についての基準時です。
 実務上,原則として,財産分与請求権が行使された時点(分与時)が評価の対象とされます。
 不動産や株式などの評価についての基準時は,財産分与請求権が行使された時点(分与時)が評価の対象となり,例えば別居時点評価額が2000万円,離婚成立時点評価額が1000万円の株式については1000万円と評価されることとなります。
 他方,預貯金は保険の解約返戻金については財産価値に変動がないので,別居時の預金残高や解約返戻金額が評価についての基準時となります。


(5) 清算的財産分与にける債務超過の場合の取扱い

夫婦(内縁の夫婦を含む。)間でプラスの財産がなく,債務しかない場合には,清算的財産分与の対象となる財産がないこととなり,財産分与の請求はできません。
 また,プラスの財産があっても,債務がそれを上回る場合にも,財産分与の請求はできません。


(6) 特有財産

 清算的財産分与においては,夫婦が婚姻生活中に形成した財産が対象となるので,対象財産の確定についての基準時(原則として別居時)で存在した財産であっても,それが婚姻前から夫または妻の名義となっていたものである場合や婚姻後離婚するまでの間に相続や贈与により取得したものである場合にはその名義人の特有財産として,分与対象財産となりません。


 もっとも,預貯金や株式については,婚姻時の残高がそのまま別居時まで残存しているとか婚姻時の残高が別居時の財産の直接の原資となっているといった事情が認められない限り,特有財産としての特定性を欠くとして特有財産として認められな いということも多くなっています。

そのため,婚姻前から定期預金となっていてそのまま残存しているというきわめて例外的な場合を除き,なかなか特有財産としては認められないのが現実です。


 もっとも,婚姻時に多額の財産を有していることや,その婚姻時の財産を大きく取り崩すことがなかったことを立証できれば,別居時の分与対象財産の形成に一定の寄与をしていると認めてもらうことにより,分与対象財産に対する寄与度を1対1ではない形に修正してもらうことができるときもあります。


 結婚後に住宅を購入した際に頭金を妻の実家が支出したといった場合,その住宅の現在の価値が住宅ローン残額を上回る場合には,その頭金部分が財産の形成に一部寄与したと考える(一部について特有財産として扱う)こととなります。

例えば,5000万円のマンションを購入する際に妻の実家が1000万円を援助しマンションの現在の価値が4000万円,住宅ローン残高が3000万円だとすると,妻は購入代金5000万円のうち1000万円を負担したことにより5分の1の財産形成にキヨしたこととなり,200万円(=(4,000(万円)-3,000(万円))×1/5)が寄与分,残りの800万円が分与対象財産となります。


(7) 相手方名義財産の開示

 相手方名義財産について,●●銀行●●支店に預貯金口座があるということや●●証券会社が保管する株式を有するというところまで特定できていれば,相手方が開示に応じない場合でも夫婦関係調整(離婚)調停,離婚訴訟のいずれにおいても裁判所に対し調査嘱託を申し立てることができるので,「●●銀行●●支店の預貯金口座」や「●●証券会社が保管する株式」があるということで開示を求めれば,相手方が開示に応じることが多いように思います。


 他方で,上記のところまで特定できていないと,裁判所が探索的な調査嘱託に応じないこともあり,相手方名義財産の開示に応じてもらうことは容易でありません。

このような場合,様々な手法を駆使して開示を求めることとなります。


(8) 自宅不動産及び住宅ローンの処理をめぐる問題の処理

 財産分与の処理に関し,自宅不動産及び住宅ローンの処理が問題となるケースは多々あります。


 夫が自宅不動産の所有者,夫のみが住宅ローン債務者,自宅不動産には夫のみが居住しているという場合であっても,夫から妻に対し多額の財産分与をせざるを得ない結果,自宅不動産を売却してその余剰金を財産分与に充てざるを得ないケースも存在します。

自宅不動産から夫が退去し妻と子どもだけが自宅不動産に残っているという場合,離婚成立後も夫が住宅ローンを返済することで合意できる場合はともかく,妻には住宅ローンを継続して返済していくだけの収入がないときには住宅を売却するほかありません(場合によっては住宅ローン残債務の支払が不可能となり破産手続開始・免責許可を申し立てる必要が生じることもあります。)。


 自宅不動産を売却せずとも大丈夫な場合であっても,離婚後に自宅不動産に居住しない夫または妻が住宅ローンの連帯債務者であったり連帯保証人になっていたりするケースが多くなっているところ,住宅ローン債権者が連帯債務者や連帯保証人を外すことに応じてくれることはきわめてまれなため,自宅不動産に居住する元夫または元妻が住宅ローンを返済し続けてくれることを期待するしかないことも多くなっています。


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