10 寄与分

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10 寄与分

(1) 寄与分とは

共同相続人中に,被相続人の財産の維持または増加に特別の寄与(通常期待される程度を超える貢献)をした者があるときに,相続財産からその者の寄与分を控除したものを相続財産とみなして相続分を算定します。
 寄与分は,その算定された相続分に寄与分を加えた額をその者の相続分とすることによって,その者に相続財産のうちから相当額の財産を取得させ,共同相続人間の公平を図る制度です(民法第904条の2)。

(2) 寄与分を受ける資格

ア  従来の取扱い

寄与分を請求できる者(寄与分権者)は,従前,相続人に限定されていました(民法第904条の2第1項)。
 寄与分権者である相続人以外の者,とりわけ相続人の妻が被相続人の介護に従事したことにより被相続人の財産の維持または増加に特別の寄与(通常期待される程度を超える貢献)をしたという事例の場合,その相続人以外の者の寄与を相続人の寄与に含めて評価することが可能でしたが,この場合でも寄与分権者自身が財産を取得できるわけではありませんでした。


イ  特別寄与料の規定の創設

(ア) 相続法改正により,被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした被相続人の親族(相続人等を除く。)は,相続の開始後,相続人に対し、特別寄与者の寄与に応じた額の金銭(「特別寄与料」といいます。)の支払を請求することができるようになりました(民法第1050条)。

(イ) 親族とは,6親等以内の血族,配偶者及び3親等以内の姻族を指すことから(民法第725条各号),相続人の妻が被相続人の介護に従事したことにより被相続人の財産の維持または増加に特別の寄与(通常期待される程度を超える貢献)をした場合などに,直接,自身に寄与分を支払うよう請求できるようになったという意味で大きな意味を持ちます。

また,「無償で」とありますが,まったくの無償の場合に限らず,相当な対価を得ないで行った場合であれば,「無償で」に該当すると考えられます。
 もっとも,寄与行為の態様としては,後記(3)記載のとおり,家業従事型,金銭等出資型,療養看護型,扶養型及び財産管理型がありますが,「被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより」という民法第1050条第1項の文言からすれば,このうち金銭等出資型及び扶養型については特別寄与料の請求はできないものと思われます(相続人以外の被相続人の親族が金銭等出資型や扶養型の寄与をした場合には,従来同様,相続人の寄与分の請求に際して被相続人の親族の寄与を相続人の寄与に含めて評価してもらうしかありません。)。

(ウ) この特別寄与料の請求は,令和元年(2019年)7月1日以後に相続が開始した者について適用されます。

(3) 寄与分の確定

ア 寄与分の確定のための類型

寄与分の確定に際しては,実務上,以下の類型に場合分けされ,それぞれの類型ごとに要件を充たすかどうかが判断されることとなっています(片岡武・菅野眞一『家庭裁判所における遺産分割・遺留分 第3版』(2017,日本加除出版)333~384頁)。

(ア) 家業従事型

(イ) 金銭等出資型

(ウ) 療養看護型

(エ) 扶養型

(オ) 財産管理型


イ 家業従事型

(ア) 家業従事型とは

被相続人の事業に関し労務を提供(民法第904条の2第1項)した場合に寄与分を求める場合の類型です。

(イ) 家業従事型において寄与が認められる要件

家業従事型において寄与が認められる要件は,以下のa.及びb.です。

a. 被相続人との身分関係に基づいて通常期待される程度を越える特別の寄与であること

b. 寄与行為の結果として被相続人の財産を維持または増加させていること(寄与行為と財産の維持または増加との間に因果関係があること)

(ウ) 家業従事型における「被相続人との身分関係に基づいて通常期待される程度を越える特別の寄与であること」の内容

a. 家業従事型の要件の1つである前記(イ)a.「被相続人との身分関係に基づいて通常期待される程度を越える特別の寄与であること」の内容は,以下の4つです。

(a) 特別の貢献

(b) 無償性

(c) 継続性

(d) 専従性

b. 前記a.(a)の「特別の貢献」とは,行為内容が,被相続人との身分関係に基づいて通常期待される範囲を超えていることを意味します。

c. 前記a.(b)の「無償性」とは,相続人が無報酬または相続人が世間一般並の労務報酬に比べて著しく少額な報酬しか受け取っていない場合を意味します。

d. 前記a.(c)の「継続性」とは,労務の提供が一定以上の期間(おおむね3~4年)に及んでいることが必要であるということを意味します。

e. 前記a.(d)の「専従性」とは,労務内容が片手間のものではなく,かなりの負担を要するものであることを意味します。

(エ) 被相続人の営む会社への労務提供

相続人が労務提供する場合に,被相続人自身が自営業者であるときだけでなく,被相続人が会社を営んでいるとき(被相続人の営む会社への労務提供)にも,寄与分が主張されることもあります。
 被相続人の営む会社への労務提供は,あくまで会社に対する貢献であり,原則としては寄与分は認められません。
 もっとも,会社とは名ばかりで,実質的には被相続人の個人企業に近く,被相続人と経済的にきわめて密着した関係にあり,かつ,会社への貢献と被相続人の資産の確保との間に明確な関連性があり,会社への労務提供に対して賃金などの対価が支払われていない(無償性)場合には,寄与分が認められる余地があります。


ウ 金銭等出資型

(ア) 金銭等出資型とは

被相続人の事業に関して財産上の給付をする場合または被相続人に対し財産上の利益を給付する場合の類型です。
 金銭等出資型の例は次のとおりです。

a. 被相続人とその配偶者が共稼ぎの夫婦であり,被相続人の名義で不動産を取得するに際し,被相続人の配偶者が自己の得た収入を提供する場合

b. 相続人が,被相続人に対し,自己所有の不動産を贈与する場合

c. 相続人が,被相続人に対し,自己所有の不動産を無償で使用させる場合

d. 相続人が,被相続人に対し,被相続人の家屋の新築,リフォーム,新規事業の開始,借金返済などのため,金銭を贈与する場合

(イ) 金銭等出資型において寄与が認められる要件

金銭等出資型において寄与が認められる要件は,以下の2つです。

a. 被相続人との身分関係に基づいて通常期待される程度を越える特別の寄与であること

b. 寄与行為の結果として被相続人の財産を維持または増加させていること(寄与行為と財産の維持または増加との間に因果関係があること)

(ウ) 金銭等出資型における「被相続人との身分関係に基づいて通常期待される程度を越える特別の寄与であること」の内容

a. 金銭等出資型の要件の1つである前記(イ)a.「被相続人との身分関係に基づいて通常期待される程度を越える特別の寄与であること」の内容は,以下の2つです(金銭等出資型の場合には,継続性や専従性は不要です。)。

(a) 特別の貢献

(b) 無償性

b. 前記a.(a)の「特別の貢献」とは,財産給付の内容が,被相続人との身分関係に基づいて通常期待される範囲を超えていることを意味します。

c.  前記a.(b)の「無償性」とは,相続人が無報酬または相続人が世間一般並の労務報酬に比べて著しく少額な報酬しか受け取っていない場合を意味します。

(エ) 被相続人の営む会社への金銭出資

相続人が金銭出資する場合に,被相続人自身が自営業者であるときだけでなく,被相続人が会社を営んでいるとき(被相続人の営む会社への金銭出資)にも,寄与分が主張されることもあります。
 被相続人の営む会社への金銭出資は,あくまで会社に対する貢献であり,原則としては寄与分は認められません。
 もっとも,会社とは名ばかりで,実質的には被相続人の個人企業に近く,被相続人と経済的にきわめて密着した関係にあり,かつ,会社への貢献と被相続人の資産の確保との間に明確な関連性があり,会社への財産給付に対して対価が支払われていない場合には,寄与分が認められる余地があります。

(オ) 相続人の経営する会社から被相続人への役員報酬の支払

相続人の経営する会社から被相続人への役員報酬の支払については,まず寄与分とは認められません。


エ 療養看護型

(ア) 療養看護型とは

相続人が,病気療養中の被相続人の療養看護に従事した場合や被相続人の介護に従事した場合の類型です。

(イ) 療養看護型において寄与が認められる要件

療養看護型において寄与が認められる要件は,以下の2つです。

a. 被相続人との身分関係に基づいて通常期待される程度を越える特別の寄与であること

b. 寄与行為の結果として被相続人の財産を維持または増加させていること(寄与行為と財産の維持または増加との間に因果関係があること)

(ウ) 療養看護型における「被相続人との身分関係に基づいて通常期待される程度を越える特別の寄与であること」の内容

a. 療養看護型の要件の1つである「被相続人との身分関係に基づいて通常期待される程度を越える特別の寄与であること」の内容は,以下の5つです。

(a) 療養看護の必要性

(b) 特別の貢献

(c) 無償性

(d) 継続性

(e) 専従性

b. 前記a.(a)の「療養看護の必要性」とは,被相続人が「療養看護を必要とする病状であったこと」+「近親者による療養看護を必要としていたこと」を意味します。

介護保険における要介護度としては,実務上,要介護度2以上の状態にあることが必要となっています。

c. 前記a.(b)の「特別の貢献」とは,被相続人との身分関係に基づいて通常期待される範囲を超えていることを意味します。

その通常期待される範囲を超えているかどうかについては,被相続人の療養看護を要する程度及び療養看護の期間から判断されます。
 また,配偶者が行う療養看護については,一般には夫婦の協力扶助義務(民法第752条)に含まれるとされており,特別の寄与と認められるためには,看護期間,内容,要看護状態,配偶者の年齢等に照らし,社会通念上,配偶者による通常の看護の程度を越えることまで必要とされています。

d. 前記a.(c)の「無償性」とは,相続人が無報酬またはこれに近い状態を意味します。

e. 前記a.(d)の「継続性」とは,療養看護が相当期間に及んでいることを意味します。

実務上,この相当期間については,最低1年以上に及んでいることが必要という扱いとなっています。

f. 前記a.(e)の「専従性」とは,療養看護の内容が片手間なものではなく,かなりの負担を要するものであることを意味します。


オ 扶養型

(ア) 扶養型とは

相続人が,被相続人を扶養し,被相続人が出費を免れたため財産が維持された場合の類型です。
 扶養型には,以下のa.及びb.の類型があります。

a. 相続人またはその親族が現実に引き取って扶養する場合

b. 相続人が扶養料を負担する場合

(イ) 扶養型において寄与が認められる要件

扶養型において寄与が認められる要件は,以下の2つです。

a. 被相続人との身分関係に基づいて通常期待される程度を越える特別の寄与であること

b. 寄与行為の結果として被相続人の財産を維持または増加させていること(寄与行為と財産の維持または増加との間に因果関係があること)

(ウ) 扶養型における「被相続人との身分関係に基づいて通常期待される程度を越える特別の寄与であること」の内容

a. 扶養型の要件の1つである「被相続人との身分関係に基づいて通常期待される程度を越える特別の寄与であること」の内容は,以下の4つです。

(a) 扶養の必要性

(b) 特別の貢献

(c) 無償性

(d) 継続性

b. 前記a.(a)の「扶養の必要性」とは,被相続人の扶養が必要であることを意味します。

c.  前記a.(b)の「特別の貢献」とは,扶養内容が,被相続人との身分関係に基づいて通常期待される範囲を超えていることを意味します。

d.  前記a.(c)の「無償性」とは,相続人が無報酬またはこれに近い状態を意味します。

e.  前記a.(d)の「継続性」とは,扶養が相当期間に及んでいることを意味します。


カ 財産管理型

(ア) 財産管理型とは

相続人が,被相続人の財産を管理することによって財産の維持形成に寄与した場合の類型です。

(イ) 財産管理型において寄与が認められる要件

財産管理型において寄与が認められる要件は,以下の2つです。

a. 被相続人との身分関係に基づいて通常期待される程度を越える特別の寄与であること

b. 寄与行為の結果として被相続人の財産を維持または増加させていること(寄与行為と財産の維持または増加との間に因果関係があること)

(ウ) 財産管理型における「被相続人との身分関係に基づいて通常期待される程度を越える特別の寄与であること」の内容

a.  財産管理型の要件の1つである「被相続人との身分関係に基づいて通常期待される程度を越える特別の寄与であること」の内容は,以下の4つです。

(a) 財産管理の必要性

(b) 特別の貢献

(c) 無償性

(d) 継続性

b. 前記a.(a)の「財産管理の必要性」とは,被相続人の財産を管理する必要があったことを意味します。

c. 前記a.(b)の「特別の貢献」とは,財産管理の内容が,被相続人との身分関係に基づいて通常期待される範囲を超えていることを意味します。

d. 前記a.(c)の「無償性」とは,相続人が無報酬またはこれに近い状態を意味します。

e. 前記a.(d)の「継続性」とは,財産管理が相当期間に及んでいることを意味します。

(4) 寄与行為の時期

寄与の終期は相続開始までであり,相続開始後の貢献については寄与分として評価することはできない(東京高決昭57.3.16家月35巻7号55頁,大阪高決平27.10.6家判8号66頁参照)。
 相続開始後の貢献については不当利得返還請求により処理するしかありません。

(5) 寄与分の評価基準時及び現実の取得金額の算出方法

  寄与分があると,相続開始時の遺産額から寄与分額を控除して「みなし相続財産」を確定して,各共同相続人の相続開始時の相続分を算定とすることとなります。

そのため,遺産分割の基準時が遺産分割時であるのとは異なり,寄与分の評価基準時は相続開始時となります。


  大半の遺産については,相続開始時と遺産分割時とで評価額に差がないことから,その2時点ともに同一の金額とすることで当事者間で合意できることが多くなっています(ただし,不動産の評価について合意に達しない場合には,相続開始時と遺産分割時の2時点について鑑定が必要になることがあります。)。

もっとも,株式については相続開始時・遺産分割時の双方の資料の提出を求められます。


  寄与分がある場合の現実の取得金額は,以下の手順によって算出されます。

寄与分の評価額を定める

⇒相続開始時における各相続人の具体的相続分を定める

⇒具体的相続分率(具体的相続分の総額に対して各相続人の具体的相続分が占める割合)を定める

⇒各相続人の取得分を,遺産分割時の遺産評価額×具体的相続分率で算出する

(6) 寄与分と他の制度等との関係

ア 寄与分と相続債務との関係

相続債務は遺産分割の対象ではないので,寄与分は相続債務の分担には何らの影響を与えません。


イ 寄与分と遺贈との関係

被相続人が遺贈した場合には,寄与分は,相続財産から遺贈の額を控除した残額を超えることはできません(民法第904条の2第3項)。
 遺贈は寄与分による修正を受けません。


ウ 寄与分と「相続させる」旨の遺言との関係

遺贈と同様に,被相続人が「相続させる」旨の遺言をした場合には,寄与分は,相続財産から相続させる旨の旨の遺言により相続させる額を控除した残額を超えることはできないものと考えられます。
 「相続させる」旨の遺言は寄与分による修正を受けません。


エ 寄与分を一切与えないという遺言の位置付け

遺言書に記載することによって遺言としての法的効力が生じる事項は民法などの法律によって限定されており,寄与分は遺言としての法的効力が生じる事項にあたらないので,寄与分を一切与えないという遺言には法律的な意味はありません。


オ 寄与分が遺留分を侵害する場合の取扱い

共同相続人の1人に多額の寄与分が認められた場合に,他の共同相続人の遺留分を侵害することがあり得ますが,これは認められています(寄与分は遺留分に優先します。)。
 そのため,共同相続人の1人に多額の寄与分が認められ,他の共同相続人の遺留分を侵害するからといって,当該他の共同相続人が遺留分侵害額請求(遺留分減殺請求)をすることはできません。


カ 遺留分減殺請求に対する寄与分の主張

共同相続人の1人が贈与や遺贈を受けている場合,他の共同相続人からの遺留分侵害額請求(遺留分減殺請求)に対し,寄与分を主張して減殺額を減らすことはできません(東京高判平3.7.30判時1400号26頁参照)。


キ 遺留分侵害額請求(遺留分減殺請求)により取り戻された財産と寄与分

遺留分侵害額請求(遺留分減殺請求)により取り戻された財産について遺産分割の対象として寄与分を主張することが考えられますが,これは認められていません。

(7) 寄与分を定める審判申立て

 寄与分を決めるために,寄与分を定める処分調停という制度が用意されています。

もっとも,遺産分割調停で話がまとまる場合には,遺産分割調停のほかに寄与分を定める処分調停を申し立てることが必須とはされていません。


 ところが,遺産分割調停で話がまとまらずに遺産分割審判に移行した場合には,別途,寄与分を定める処分審判を申し立てておかないと,寄与分の審判がなされません。

なお,実務上,この寄与分を定める処分審判は,遺産分割調停で話がまとまらずに遺産分割審判に移行した後すみやかに申し立てることが求められています。

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