13 遺贈,死因贈与,「相続させる」旨の遺言

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13 遺贈,死因贈与,「相続させる」旨の遺言

(1) 遺贈

ア 遺贈とは

遺贈とは,被相続人が遺言によって無償で自己の財産を他人に与える処分行為です(民法第964条)。
 遺贈は,遺言者の一方的な意思表示である点で,死因贈与と異なります。


イ 受遺者

受遺者(遺贈によって相続財産を与えられた者)は,相続人に限られませんし,法人でもかまいません。
 もっとも,遺言の効力が生じるまでの時点で受遺者が死亡していると,遺贈は無効となります(民法第994条)。


ウ 遺贈の種類

(ア) 特定遺贈

特定遺贈とは,遺言者の有する特定の財産を具体的に特定して無償で与えるものです。

(イ) 包括遺贈

包括遺贈とは,遺言者が財産の全部または一部を一定の割合で示し逓増することをいいます。
 包括遺贈には,全部包括遺贈(積極・消極の財産を包括する相続財産の全部を受遺者に取得させるもの)と割合的包括遺贈(財産に対する一定の割合を示してする遺贈)とがあります。


エ 遺贈の効果

(ア) 特定遺贈

権利のみが受遺者に与えられます。
 また,特定遺贈の対象財産は遺産分割の対象から除かれます。

(イ) 全部包括遺贈

遺贈の効力発生と同時に,権利も義務も含めて包括的に受遺者に移転します。
 また,すべての遺産が遺産分割の対象から外れます。

(ウ) 割合的包括遺贈

遺言で示された割合が受遺者に承継されますが,遺産の具体的な分割方法は遺産分割の手続により決定されることとなります。


オ 遺贈と詐害行為取消し

遺言者が多額の債務を抱えて特定の財産以外にみるべき財産がない状況下で相続人や相続人以外の者に対し特定の財産を遺贈した場合,東京地判平26.7.15(平22(ワ)第9489号)ウエストロー・ジャパンが遺贈について「死因贈与の趣旨も包含するものであったと認めるのが相当である。」旨述べて詐害行為取消しを肯定していることからすれば,詐害行為取消し(民法第424条)の対象となり得ます。

(2) 死因贈与

ア 死因贈与とは

死因贈与とは,贈与者の死亡によって効力を生ずる贈与をいいます。


イ 遺贈と死因贈与との異同

死因贈与には,遺贈に関する規定が準用されます(民法第554条)。
 しかし,死因贈与は遺贈と異なり要式行為ではないので,遺言の方式に関する規定などは準用されません。


ウ 死因贈与と詐害行為取消し

被相続人が多額の債務を抱えて特定の財産以外にみるべき財産がない状況下で相続人や相続人以外の者に対し特定の財産を死因贈与した場合,詐害行為取消し(民法第424条)の対象となり得ます。

(3) 「相続させる」旨の遺言

ア 「相続させる」旨の遺言とは

「相続させる」旨の遺言は,特定の遺産を特定の相続人に取得させるものです。


イ 遺贈と比較した場合の「相続させる」旨の遺言のメリット

以下の(ア)~(ウ)に記載する3つの点で,「相続させる」旨の遺言は遺贈よりもメリットがあります。

(ア) 登記手続の簡便さ

所有権移転登記手続において,遺贈の場合には,他の共同相続人と共同で申請しなければなりません(不動産登記法第60条,昭和33年4月28日民事甲779号民事局長通達)。
 他方,「相続させる」旨の遺言の場合には,受益者である相続人が単独で申請することができます(不動産登記法第63条第2項,昭和47年4月17日民事甲1442号民事局長通達)。

(イ) 賃貸人の承諾の要否

遺産が借地権または賃借権の場合,遺贈の場合には,賃貸人の承諾が必要となります(借地借家法第19条,民法第612条第1項)。
 「相続させる」旨の遺言の場合,賃貸人の承諾は不要です。

(ウ) 登記と対抗要件

遺贈により目的物の所有者が受遺者に移転したとしても,受遺者が物権変動の事実を第三者に対抗するためには,遺贈による物権変動につき対抗要件が具備されていなければなりません。
 例えば,被相続人の法定相続人が配偶者A及び子Bであり,「不動産をAに遺贈する」旨の遺言がなされていた場合,Bが法定相続分による相続を原因とする共有登記を経てその共有持分2分の1を第三者Cに売却しCは持分権移転登記手続を完了したという場合,AはCに対抗できません。
 他方,「相続させる」旨の遺言により目的物の所有者が相続人に移転した場合には,当該相続人は登記なくして「相続させる」旨の遺言による物権変動を第三者に対抗することができます。
 例えば,被相続人の法定相続人が配偶者A及び子Bであり,「不動産をAに相続させる」旨の遺言がなされていた場合,Bが法定相続分による相続を原因とする共有登記を経てその共有持分2分の1を 第三者Cに売却しCは持分権移転登記手続を完了したという場合であっても,AはCに対抗することができます。


ウ 特定の遺産について相続人に「相続させる」旨の遺言がなされた場合の効果

特定の遺産について相続人に「相続させる」旨の遺言がなされた場合,その特定の遺産については,ただちに当該相続人に所有権が帰属することとなります。
 そのため,当該遺産は遺産分割の対象ではなくなります。


エ 包括して相続人に「相続させる」旨の遺言がなされた場合の効果

包括して相続人に「相続させる」旨の遺言がなされる場合には,全財産相続型(すべての遺産について「相続させる」旨の遺言がなされる場合)と,割合的相続型(遺産に対する一定の割合を示してする場合)とがあります。

(ア) 全財産相続型(すべての遺産を「相続させる」旨の遺言がなされた場合)

包括して相続人に「相続させる」旨の遺言がなされた場合,すべての権利・義務が当該相続人に承継されます。
 そのため,遺産分割の対象となる遺産が存在しないこととなります。

(イ) 割合的相続型(遺産に対する一定の割合を示してなされた場合)

遺言で示された割合が遺言を取得する者に承継されますが,遺産の具体的な分割方法は遺産分割の手続により決定されることとなります。

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