15 遺留分

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15 遺留分

(1) 遺留分とは

遺留分とは,被相続人の財産のなかで,法律上その取得が一定の相続人に留保されていて,被相続人による自由な処分に制限が加えられている持分的利益をいいます。

(2) 遺留分権利者

 遺留分権利者(遺留分権を有する相続人)は,被相続人の配偶者,子,直系卑属です(民法第1042条第1項柱書)。

子の代襲相続人も,被代襲者である子と同じ遺留分を有します。


 他方で,兄弟姉妹には,遺留分はありません(民法第1042条第1項柱書)。


 胎児は,生きて生まれれば,子としての遺留分を有することになります(民法第886条)。


 相続欠格,廃除または相続放棄により相続権を失った者は遺留分もありません。

しかし,相続欠格または廃除の場合には,代襲相続が開始しますので,これらの者の直系卑属が遺留分権利者となります(民法第1044条,第887条第2項・第3項)。

(3) 遺留分の放棄

遺留分権利者は,相続開始前に,家庭裁判所の許可を得て遺留分を放棄することができます(民法第1049条第1項)。
 なお,遺留分権利者は,相続開始後であれば,家庭裁判所の許可を得ることもなく遺留分を放棄することが可能です。

(4) 遺留分の割合

ア 総体的遺留分の割合

遺留分権利者全体に残されるべき遺産全体に対する割合を総体的遺留分といい,次のように定められています。

(ア) 直系尊属のみが相続人である場合

被相続人の3分の1が遺留分です(民法第1028条第1号)。

(イ) 直系尊属のみが相続人である場合以外の場合

直系尊属のみが相続人である場合以外の場合には,以下のa~dの場合があります。

a. 直系卑属のみの場合

b. 直系卑属と配偶者の場合

c. 直系尊属と配偶者の場合

d. 配偶者のみの場合

直系尊属のみが相続人である場合以外の場合においては,被相続人の財産の2分の1が遺留分です(民法第1028条第2号)。


イ 個別的遺留分の割合

個別的遺留分の割合は,総体的遺留分の割合に法定相続分の割合を乗じたものです。
 遺留分権利者が複数存在する場合,この個別的遺留分は,総体的遺留分を基礎として,法定相続分の算定式に従い算出されます(民法第1044条,第900条,第901条)。
 例えば,被相続人の相続人が配偶者と2人の子の場合,総体的遺留分は2分の1,法定相続分が2分の1である配偶者の個別的遺留分は4分の1(=2分の1×2分の1),法定相続分がそれぞれ4分の1(=2分の1×2分の1)である子らの個別的遺留分額はそれぞれ8分の1(=2分の1×4分の1)となります。

(5) 遺留分額の算定

ア 遺留分算定の基礎となる財産額

遺留分算定の基礎となる財産額は,【相続開始時に被相続人が有していた積極財産の価額】+【被相続人が贈与した財産の価額】-【相続債務の全額】となります(民法第1043条第1項)。


イ 相続開始時に被相続人が有していた積極財産の価額

遺留分算定の基礎となる財産額のうち,「相続開始時に被相続人が有していた積極財産」は,遺産分割の対象となる遺産と同様であり,以下の(ア)~(コ)があります。

(ア) 不動産及び関連する財産

a. 不動産(所有権)

b. 不動産賃借権

c. 不動産の共有持分権(最三小決平17.10.11民集59巻8号2243頁参照)

(イ) 預貯金(最大決平28.12.19民集70巻8号2121頁参照)

(ウ) 現金

(エ) 投資信託(最三小決平26.2.2.5民集68巻2号173頁参照)

(オ) 国債

(カ) 株式会社における株式,特例有限会社における出資持分

(キ) 動産

(ク) 生命保険金のうち,保険契約者(被相続人)が被保険者及び保険金受取人の資格を兼ねる場合の満期保険金請求権

(ケ) 死亡退職金のうち,遺産性が認められるもの

(コ) 社債

(サ) ゴルフ会員権*7のうち,預託金制でその会則が相続制を肯定しているかその会則に相続について定めがない場合または株主会員制のもの

(シ) 知的財産権


ウ 被相続人が贈与した財産の価額

(ア) 算入される贈与の限定(令和元年(2019年)7月1日より前に相続が開始した場合)

令和元年(2019年)7月1日より前に相続が開始した場合における,遺留分算定の基礎となる財産額のうち,被相続人が贈与した財産の価額として算入される贈与は,以下のとおりです。

a. 相続開始前の1年間にされた贈与(民法第1044条第1項前段)

b. 遺留分権利者に損害を与えることを知ってされた贈与(民法第1044条後段)

c. 特別受益者としての贈与(最三小判平10.3.24民集52巻2号433頁参照)

(イ) 算入される贈与の限定(令和元年(2019年)7月1日以後に相続が開始した場合)

相続法改正により,令和元年(2019年)7月1日以後に相続が開始した場合における,遺留分算定の基礎となる財産額のうち,被相続人が贈与した財産の価額として算入される贈与は,以下のとおりです(前記(ア)c.の「特別受益者としての贈与」が含まれなくなっています。)。

a. 相続開始前の1年間にされた贈与(民法第1044条第1項前段)または相続開始前の10年間にされた贈与(民法第1044条第3項・第1項前段)

b. 遺留分権利者に損害を与えることを知ってされた贈与(民法第1044条後段)

(ウ) 持戻しを免除された贈与価額の取扱い

贈与について持戻し免除の意思表示がなされた場合であっても,その贈与は遺留分算定の基礎となる財産に算入されます(最一小決平24.1.26裁時1548号1頁,大阪高判平11.6.8判時1704号80頁)。


エ 相続債務の全額

遺留分算定の基礎となる財産額から控除される対象となる相続債務には,私法上の債務だけでなく,税金や罰金などの公法上の債務も含まれます。
 もっとも,被相続人が他人の債務のために連帯保証契約を締結していた場合などの保証債務については,債務の履行が不確実である場合や保証人が複数存在する場合もあるため,常に民法第1043条第1項の債務に含まれると解する必然性はなく,主たる債務者が無資力で求償権の行使による填補の実効性がない場合に限り,被相続人の財産から控除すれば足りるものとされています(東京高判平8.11.7判時1637号31頁)。



*7 ゴルフ会員権

ゴルフ会員権には,社団法人制,株主会員制及び預託金制の3つの種類があります。
 社団法人制は,利益追求を目的としない公益法人のため,会員権は一代限り,または直系社のみ継承できるものとなっているので,相続の対象となりません。
 株主会員制は,会員が株主として出資する形態をとるもので,相続の対象となります。
 預託金制は,一定の金員をクラブに預けて会員となる方式で,会則で相続制が否定されていない限り相続の対象となります。

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