18 相続放棄・相続の限定承認

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18 相続放棄・相続の限定承認

(1) 相続における選択

 相続人は,相続するかどうかについての選択の自由があります。
相続人は,一定の期間(熟慮期間)内に,相続財産を負債を含めて全面的に承継するか(単純承認),財産の承継を全面的に拒否するのか(相続放棄),相続した資産の範囲内で債務などの責任を負うのか(限定承認)を選択できます。

  相続人が,単純承認,相続放棄,限定承認のいずれを選択するかの熟慮期間は3か月ですが(民法第915条第1項本文),その期間内に結論を出すことが出来ない場合には,相続の承認または放棄の期間の伸長を申し立てることができます(同項ただし書)。
なお,相続の承認または放棄の期間の伸長申立てにより伸長される期間は原則として3か月です。

(2) 相続放棄申述受理申立て

ア 相続放棄とは

相続放棄とは,相続人が相続開始による包括承継の効果を全面的に拒否する意思表示です。
 相続放棄申述受理申立てが適法に受理されると,当該相続人は,その相続に関しては最初から相続人にならなかったものと扱われます(民法第939条)。


イ 相続放棄の手続

(ア) 相続人が相続を放棄するためには,相続の承認または放棄の期間の伸長申立てによりその期間の伸長が認められない限り,相続人は,「自己のために相続の開始を知った時」から3か月以内に,必要な戸籍謄本等を入手した上で,被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に対し,相続放棄申述受理を申し立てなければなりません。

(イ) 相続放棄申述受理申立後,裁判所から同申立てが真意に基づくものであるかどうかの照会がなされますので,その照会に回答すれば,裁判所から相続放棄の申述を受理した旨の通知書が届きます。

(ウ) その通知書受領後に,改めて相続放棄申述受理証明書発行申請を行えば,同証明書が発行されるので,被相続人の各債権者に対し同証明書を添えて相続放棄の申述が受理された旨を伝えることになります。

(エ) 被相続人の子どもや兄弟姉妹といった関係者全員が相続放棄を希望するような場合,先順位の相続人がいるときには,その先順位の相続人の相続放棄の申述が受理されない限り,後順位の相続人は同申述受理申立てができません。

そのため,相続の第1順位である被相続人の子どもが相続放棄の申述が受理されてから,次順位以降の相続人の同申述受理を申し立てることとなります。


ウ 「自己のために相続の開始を知った時」の解釈

「自己のために相続の開始を知った時」とは,原則として,「相続開始の原因たる事実及びこれにより自己が法律上相続人となった事実を知った場合」となります。
 もっとも,相続人が,上記各事実を知った場合であっても,この上記事実を知った時から3か月以内に限定承認または相続放棄をしなかったのが,被相続人に相続財産が全く存在しないと信じたためであり,かつ,被相続人の生活歴,被 相続人と相続人との間の交際状態その他諸般の状況からみて当該相続人に対し相続財産の有無の調査を期待することが著しく困難な事情があつて,相続人においてこのように信ずるについて相当な理由があると認められるときには,相続人が前記の各事実を知った時から熟慮期間を起算すべきであるとすることは相当でないものというべきであり,熟慮期間は相続人が相続財産の全部又は一部の存在を認識した時または通常これを認識しうべき時から起算すべきものとされています(最二小判昭59.4.27民集38巻6号698頁参照)。
 そのため,被相続人が亡くなったのを知ってから3か月を経過した場合であっても,相続放棄申述受理申立てが認められる余地があります。


エ 相続放棄における注意点

相続放棄の申述については,形式的な要件を充たせば受理されるもので,それ自体で相続放棄の効力が完全に認められるというものではありません。
 そのため,被相続人が死亡してから3月以上を経過した場合には,相続放棄申述受理を申し立て,その申述が受理されたときであっても,被相続人の債権者から当該相続人に対し相続放棄の効力を争って貸金等を請求されるおそれがあることに注意する必要があります。

(3) 相続の限定承認申述受理申立て

ア 相続の限定承認とは

相続の限定承認とは,相続した財産の範囲内で被相続人の債務を弁済し,余りがあれば相続できるという制度です。
 限定承認者は,相続財産,相続債務を承継します。
 限定承認者は,債務を全額承継するものの,相続財産の限度を超えて弁済する必要はありません(民法第922条)。


イ 相続の限定承認の手続

(ア) 相続人が相続の限定承認をするためには,相続の承認または放棄の期間の伸長申立てによりその期間の伸長が認められない限り,相続人は,「自己のために相続の開始を知った時」から3か月以内に,必要な戸籍謄本等を入手した上で,被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に対し,相続の限定承認申述受理を申し立てなければなりません。

また,相続人が複数の場合には,限定承認は,共同相続人の全員が共同して行う必要があります(民法第923条)。

(イ) 限定承認者が複数のときは,相続人の中から相続財産管理人が選任されます(民法第936条)。

(ウ) 限定承認者が1人のときはその限定承認者が,限定承認者が複数のときは相続財産管理人が,請求催告の申し出や債務の弁済,相続財産の換価等を行います(民法第927条,第930条,第931条,第932条,第936条第3項)。

なお,請求催告の申し出や債務の弁済,相続財産の換価等については同時並行的に行われます。

(エ) 相続財産を換価する必要があるときには,原則として競売手続による必要があります(民法第932条本文)。

居住不動産など,限定承認者が相続したいという被相続人の財産がある場合には,家庭裁判所に対して鑑定人選任を申し立て,その選定された鑑定人による相続財産の鑑定評価を経て,その金額を限定承認者自身の固有の財産から支払うことで,その居住不動産などの被相続人の財産を取得することができます(同条ただし書)。
 限定承認者のこの権利を先買権といいます。

(オ) 債務の弁済等がすべて終了してもなお残余財産がある場合,限定承認者が1人であれば当該限定承認者がその残余財産を取得します。

限定承認者が複数の場合には,限定承認者間での遺産分割を経て,その残余財産を取得することとなります。


ウ 相続の限定承認活用のメリット

相続の限定承認活用のメリットには,以下の(ア)及び(イ)があります。

(ア) 相続債務が積極財産より多額となった場合でも相続人がその固有の財産から債務を弁済する義務を負わないこと

(イ) 先買権を行使することで相続財産の一部を取得することが可能なこと


エ 相続の限定承認における注意点

限定承認の場合,被相続人から相続人に対し財産が時価で譲渡されたとみなされ,譲渡所得税の支払義務が生じます。
 また,相続財産を換価するにあたり,先買権を行使しない限り競売手続による必要があり,単純承認した上で競売手続によらずに任意売却する場合に比べて売却金額が低下してしまいがちです。
 このように,相続の限定承認においては,単純承認の場合に比べて最終的に取得できる財産が減少することが多くなることに注意が必要です。

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