8 遺産分割の対象となる遺産の範囲

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8 遺産分割の対象となる遺産の範囲

(1) 遺産分割の対象となる遺産

遺産分割の対象となる遺産とは,相続開始時に存在し,かつ,原則として分割時にも存在する,未分割の遺産です。
 もっとも,「分割時にも存在する」という点について,相続法改正により,相続開始後遺産分割前に処分された財産がある場合に,当該処分した者以外の共同相続人全員の同意があれば,その取得した財産が遺産分割時に遺産として存在するものとみなした上で遺産分割することができるようになっています(民法第906条の2)。
 この処分された財産を遺産分割の対象とすることのできる条項については令和元年(2019年)7月1日以後に相続が開始する場合に適用されます。

(2) 遺産分割の対象となる遺産の項目

実務上,遺産分割の対象となる遺産には,以下のア~シがあります(片岡武・菅野眞一『家庭裁判所における遺産分割・遺留分 第3版』(2017,日本加除出版)142~188頁)。

  不動産及び関連する財産

(ア) 不動産(所有権)

(イ) 不動産賃借権

(ウ) 不動産の共有持分権(最三小決平17.10.11民集59巻8号2243頁参照)

  預貯金(最大決平28.12.19民集70巻8号2121頁参照)

  現金

  投資信託(最三小決平26.2.2.5民集68巻2号173頁参照)

  国債

  株式会社における株式,特例有限会社における出資持分

  動産

  生命保険金のうち,保険契約者(被相続人)が被保険者及び保険金受取人の資格を兼ねる場合の満期保険金請求権

  死亡退職金のうち,遺産性が認められるもの

  社債

  ゴルフ会員権*5のうち,預託金制でその会則が相続制を肯定しているかその会則に相続について定めがない場合または株主会員制のもの

  知的財産権

(3) 遺産分割の対象となるか否かについて特に注意しておくべき財産

ア  損害賠償請求権等(預貯金債権以外の可分債権)

預貯金以外の,被相続人の不法行為または債務不履行に基づく損害賠償請求権,不当利得返還請求権,賃料請求権,報酬請求権などの金銭債権は,相続の対象とはなるものの,金銭債権であるから,合意がない限り遺産分割の対象となりません。
 預貯金について遺産分割の対象となる旨判断した最大決平28.12.19民集70巻8号2121頁は,従来,可分債権として取り扱われてきた財産権のうちで預貯金以外のものについては何ら判断していないからです。


イ  生命保険金

保険契約者を被相続人とする生命保険金については,以下の(ア)~(オ)記載のとおり,契約の内容ごとに遺産分割の対象となるかどうか等が異なります。

(ア) 保険契約者:被相続人,被保険者:被相続人,保険金受取人:相続人中の特定の者

指定された者の固有の権利として保険金請求権を取得し,遺産分割の対象とはなりません。

(イ) 保険契約者:被相続人,被保険者:被相続人,保険金受取人:被保険者またはその死亡の場合は相続人

保険金請求権は,保険契約の効力発生と同時に相続人の固有財産となるので,遺産分割の対象とはなりません。
 もっとも,保険金受取人は,相続分の割合による権利を有することになります(最二小判平6.7.18民集48巻5号1233頁参照)。

(ウ) 保険契約者:被相続人,被保険者:被相続人,保険金受取人:指定なし

約款に被保険者の相続人に支払う旨の条項が設けられている場合には,前記(イ)と同様なので,遺産分割の対象とはなりません。
 もっとも,この場合,保険金受取人は,相続分の割合による権利を有することになります(最二小判昭48.6.29民集27巻6号737頁参照)。

(エ) 保険契約者:被相続人,被保険者:被相続人,保険金受取人:被相続人

 a. 満期保険金請求権

満期保険金請求権は,保険契約の効力発生と同時に被相続人の財産となるので,満期後に被相続人が死亡すれば遺産分割の対象となります。

 b. 保険事故による保険金請求権

相続人を受取人と指定するとの黙示の意思表示があったと解されることから,保険金請求権は相続人の固有財産となり,遺産分割の対象とはなりません。

(オ) 保険契約者:第三者,被保険者:被相続人,保険金受取人:被相続人

被保険者(被相続人)が死亡した際にはその相続人を受取人に指定するとの黙示の意思表示があったと解されることから,保険金請求権は相続人の固有財産となり,遺産分割の対象とはなりません。


ウ 死亡退職金

死亡退職金が遺産分割の対象となるかどうかについては,死亡退職金に関する支給規定があるかどうかで場合分けし,規定がある場合には支給基準や受給権者の範囲・順位などの規定により遺産制を検討し,死亡退職金に関する支給規定がない場合には従来の支給慣行や支給の経緯等を勘案して個別に遺産性を検討することとなります。
 大半のケースでは,受給権者固有の権利であって遺産性が否定され,遺産分割の対象とはなりません。


エ 協同組合の出資金

出資金の払戻請求権は単なる金銭債権と評価され,可分債権として遺産分割前に当然分割されることとなり,遺産分割の対象とはなりません。



*5 ゴルフ会員権

ゴルフ会員権には,社団法人制,株主会員制及び預託金制の3つの種類があります。
社団法人制は,利益追求を目的としない公益法人のため,会員権は一代限り,または直系社のみ継承できるものとなっているので,相続の対象となりません。
株主会員制は,会員が株主として出資する形態をとるもので,相続の対象となります。
預託金制は,一定の金員をクラブに預けて会員となる方式で,会則で相続制が否定されていない限り相続の対象となります。
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