川崎パシフィック法律事務所

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不安な気持ちになりやすい金銭的な問題の解決をサポートし、新たな生活への第一歩を踏み出していただくため、債務整理や自己破産手続き、民事再生などのご相談を承っております。また、消費者金融会社からの借り入れで発生した過払い金のご相談も承りますので、少しでも不安がある方は気兼ねなくお問い合わせください。相談者様が置かれた状況に応じて最適な対処方法を取ります。

第1 債務整理相談全般

消費者金融会社 (サラ金)等から多額の借入をしており,返済に行き詰まっています。どうすればよいでしょうか?
まずは,弁護士に相談されることをお勧めいたします。
弁護士に債務整理を依頼されれば,直ちに弁護士から各債権者に対して「受任通知」を発送いたします。
この受任通知発送により,貸金業者は債務者に対して直接連絡を取ることが禁止されます(貸金業法21条1項9号/詳しくは,【個人の債務整理】 (1) 弁護士に債務整理を依頼されたらをご参照下さい。)。
また,弁護士に依頼されれば,故人の債務整理については,自己破産手続,個人再生 (民事再生)手続,任意整理手続,過払金回収手続の4つの手続のうち,最善の方法を選択することができます(詳しくは, 【個人の債務整理】 (4)債務整理の方法をご参照下さい。)。
上記4つの手続のうち,いずれの手続を選択すればよいかは,以下のような様々な要素を検討することになります。
・借入総額
・借入の種別 (貸付金かショッピング等の利用による立替金か)
・借入先の性質 (消費者金融会社や信販会社,銀行等の別)
・借入期間 (債務総額の圧縮が可能か,過払金の発生を見込むことができるか)
・相談者様の収支の状況
・住宅ローンを抱えているか
・住宅ローン以外に (根)抵当権設定登記がなされているか
・住宅ローンを滞納しているか
・自己破産手続を選択した場合の資格制限に該当する職種に就職しているか
弁護士に相談されれば,これらの要素を検討し,相談者様にとっていずれの手続が最善か (場合により,自己破産手続と過払金回収手続を組み合わせる等の処理もあります。),選択することができます。
債務整理を行った場合のメリット・デメリットはどういうものがありますか?
(1)債務整理のメリットとしては,大きく次の2つが挙げられます。
①取立ての禁止
弁護士に債務整理を依頼されれば,直ちに弁護士から各債権者に対して「受任通知」を発送いたしますので,この受任通知発送により,貸金業者は債務者に対して直接連絡を取ることが禁止されるので(貸金業法21条1項9号),債務整理を行えば,少なくとも当面は返済の必要がなくなります。
②債務の圧縮等
債務整理のうち,自己破産手続を選択すれば,債権者に配当するような財産がなければ債務を全く支払わずにすむことになりますし,個人再生(民事再生)手続を選択した場合でも総債務額を大きく圧縮することが可能です。
また,任意整理手続でも,利息制限法に定める利息に引き直して計算し,遅延損害金や将来利息をカットすることもできるので,総債務額の圧縮が可能です。
さらに,過払金回収手続が可能な場合には,債務を支払うどころか財産を増加させることができる場合もあります。
(2) 債務整理のデメリットとしては,大きく,次の3つがあります (ただし,残債務がある場合に限られます。)。
①キャッシュカードやクレジットカードが使えなくなったり,今後,新たな借入が難しくなったりすること  債務整理のうちのいずれの手続をとるにせよ,弁護士からの受任通知を受領した段階で,貸金業者はその債務者について事故情報を載せることになります (いわゆる「ブラックリスト」)。
そのため,弁護士に債務整理を依頼された場合,消費者金融会社 (サラ金) に借金のある方がその消費者金融会社 (サラ金) を利用できなくなるのはもちろん,信販会社に借金のある方はその信販会社の発行するクレジットカード (そのクレジットカードと連動するETCカード等も含みます。)を利用できなくなります。
②銀行等の金融機関が債権者となっている場合,その金融機関の預金口座が使用できなくなること  銀行等の金融機関からバンクカード等のカードローンを組んでいてその金融機関からも借入がある場合,その金融機関は,弁護士からの受任通知を受領した段階で,依頼者の方 (債務者) の預金口座を凍結し,その金融機関にある預金と貸付金の相殺を行います。
③ (連帯) 保証人に対する請求に対する一括請求の危険性
貸金業者等からの債務について依頼者の方が主債務者となっていて,ほかに (連帯) 保証人の方がいる場合で,その (連帯) 保証人については債務整理を依頼されていないときには,主債務者が分割払いをしている場合でも,主債務者が支払を停止したことにより期限の利益を喪失し (債務の支払を怠った場合に債務者が分割弁済する利益を失うこと),貸金業者が(連帯)保証人に対して,一括弁済を求めることができるようになります。
詳しくは,【個人の債務整理】 (3)債務整理を依頼された場合に注意すべき点をご参照下さい。
 ただし,これらのデメリットは,債務の返済が滞ってしまった場合にも生じるものばかりですので,債務の返済に行き詰まってしまっている方にとってはやむを得ないものばかりということもできます。
ですので,債務の返済に行き詰まってしまっているか,または行き詰まりそうになっているのに,債務整理のデメリットをおそれて債務整理を行わないというのは本末転倒ではないかと思います。
債務整理を行うと,今後二度と借入ができなくなるのでしょうか?
債務整理を行うと,いわゆる「ブラックリスト」に載ってしまうことがほとんどです。
消費者金融会社等から借入をした情報は,各信用機関(㈱CIC等)の個人信用情報に載せられますが,長期の延滞をした場合等と同様に,弁護士による受任通知が発送された場合にも「事故情報」として登録されることが「ブラックリスト」に載るという事の中身です。
事故情報に登録される期間は,一般的に5~7年ほどといわれています。
そのため,その期間中は一般的に新たな借入が困難といえます。
もっともそれ以上期間が経過している方でも,新規の借入を拒絶される場合もありますし,その期間内でも消費者金融会社等から借入ができたり住宅ローン審査がおりたりする方もいらっしゃいますので,ブラックリストが絶対的な基準となっているわけではないようです。
なお,平成22年4月19日以降,過払金回収 (返還請求) のみによっては各信用機関のブラックリストに載らない扱いとなっていますので,過払金回収手続を選択できるときには,ブラックリスト入りをおそれなくてよいことになっています。
ただし,現状で債務の返済に行き詰まってしまっているのであれば、既にブラックリスト入りしている可能性が高く,また債務の返済に行き詰ま利そうな場合にはいずれブラックリスト入りしてしまう可能性が高いので,債務整理を行わなくても,同じ状況に陥る可能性が高いわけで,「ブラックリスト」に載ってしまうことを過度におそれるべきではないでしょう。

第2 自己破産手続

自己破産手続はどのような場合に用いることができるのでしょうか?
支払不能であると認められること,及び免責許可決定に意味があり,かつ免責許可決定が得られそうであることが必要になります。
(1) 支払不能について
裁判所が破産手続開始決定を下すには,個人の債務者の場合,債務について支払不能であることが認められなければなりません (破産法15条1項) 。
そのため,個人の債務者が自己破産手続を選択されるには,まず債務について支払不能と認められる必要があります。
そして,債務者が支払を停止したときには支払不能と推定されるため (破産法15条2項) ,弁護士が依頼を受け,受任通知を発送した段階で支払を停止することになりますので,弁護士に破産を依頼した時点でまず支払不能であると評価されることになります。
 もっとも,依頼者様の収入や財産の割にあまりに総債務額が小さいと支払不能と裁判所が認めないときもあります。
 ただし,よほど高収入の方以外では総債務額100万円程度以上であれば支払不能と認めてもらえているというのが実感です。
(2) 免責許可決定に意味がある場合または免責許可決定が得られそうであることについて
自己破産手続は,債務について支払わなくてよいという免責許可決定を得るために選択するものですが,免責の対象とならない(仮に免責許可決定がなされても支払義務が残る)債務ばかりというような場合 (これを「非免責債権」といいます。) には,自己破産手続を選択しても意味がないということになります。
非免責債権には租税等の請求権がありますが,詳しくは, 【個人の債務整理】 (6) 自己破産手続 オ 免責の効果をご参照下さい。
また,自己破産手続は,債務について支払わなくてよいという免責許可決定を得るために選択するものですから,およそ免責許可決定が得られそうにないときには選択する意味がないこととなります。
浪費等の免責不許可事由がない場合または免責不許可事由があってもその程度が著しく悪いというものではないために裁量免責を受けられそうな場合には免責許可決定を受けることができますが,債務の原因が通常では考えられないようなあまりにも著しい浪費にあるような場合には,自己破産手続を選択できないということになります。
なお,免責不許可事由,裁量免責の詳細については,【個人の債務整理】 (5) 手続選択の基準の脚注「免責不許可事由」,「裁量免責」をご参照下さい。
債務整理を行った場合のメリット・デメリットにはどういうものがあるのでしょうか?
債務整理を行うことによるメリット・デメリットについては,第1「債務整理全般」のQ2「債務整理を行った場合のメリット・デメリットはどういうものがありますか?」をご参照下さい。
自己破産手続の最大のメリットは,財産がまったくないか、ほとんどない場合には債務をまったく支払わずにすみ (同時廃止事件),また財産が一定額以上ある場合でもその保有する財産の一部を破産管財人に引き渡すだけですむということにあります。

他方,自己破産手続特有のデメリットとしては,同時廃止事件と破産管財事件共通のものとして,大きく以下の4つがあります。
なお,同時廃止事件と破産管財事件の詳細については,【個人の債務整理】(6) 自己破産手続 > ウ 自己破産手続の概要をご参照下さい。
①一定程度以上の財産を所有している場合,その財産を失ってしまうこと  20万円以上の財産を有している場合,破産管財事件となってしまい,手元に残してよい財産 (自由財産) や破産手続開始決定後に得られる財産 (新得財産) を除き,破産管財人に管理処分権が委ねられる (取り上げられてしまう) ことになります。
なお,破産した場合にどのような財産を手元に残すことができるかということの詳細については,【個人の債務整理】(6) 自己破産手続 エ 自由財産等をご参照下さい。
② 官報に掲載されてしまうこと
 自己破産手続を選択されると,破産手続開始決定 (裁判所が債務について支払不能であることを認めて決定したこと) が下されたときなどにその事実が官報に掲載されてしまいます。
ただし,ほとんどの方は官報をご覧にならないので,自己破産手続を選択した事実が周囲の方に発覚するということはまずあり得ません。
③ 資格制限
自己破産手続を選択されると,弁護士,警備員等一定の資格に基づいて就労している方は,資格制限に該当し,一定期間その資格に基づいて就労することができなくなります。
しかし,これらの資格制限についても,裁判所において破産手続開始決定を受けた後,復権を得る (免責許可決定を受ける) までの間に限られますので,通常は2~3か月間だけの制限となっています。
④ 特定の債務だけ支払うということができないこと
自己破産手続を選択されると,すべての債務についての支払を停止する必要がありますので, (連帯)保証人付の債務だけを支払うとか自動車を手元に残したいから自動車ローンのみ支払を継続するといったことはできなくなります (ただし,破産を申し立てる方以外の第三者が支払うことまで禁止されるわけではありません。) 。

 また,破産管財事件となった場合のデメリットとしては,さらに以下の2つがあります。
 ただし,これらの制限も期間が制限されているので,それほど大きいデメリットとはいえないでしょう。
⑤ 郵便物の転送
破産手続開始決定後,少なくとも第1回債権者集会期日までの2~3か月の間,破産者宛て郵便物がすべて破産管財人に転送され,開封して財産隠し等がないかどうかチェックされた上で返却されます (破産法190条参照)。
⑥ 居住の制限
破産手続開始決定後,免責許可決定がおりる,少なくとも2~3か月の間,破産管財人の同意を得て裁判所の許可を受けなければ,居住地を離れて転居したり長期の旅行をしたりすることができません (破産法37条1項参照) 。
自己破産手続を選択すると子どもや親族の就職や結婚に支障が出たり,選挙権を失ったりすることがあるのでしょうか?
これらは,よく受ける質問なのですが,ご心配いりません。
破産手続開始決定が下されると,破産者の本籍地の市区町村役場における「破産者名簿」に記載されるのですが,これらは閲覧の対象になっていません。
また,全部事項証明書 (戸籍謄本) や住民票を取得した際に自己破産手続を選択した事実が記載されることもありません。
破産手続開始決定後,復権を得る (免責許可決定がおりる) までの期間 (一般的には2~3か月),市区町村役場において取得できる身分証明書には自己破産手続を選択した事実が記載されますが,身分証明書の提出を求められることはまずありませんし,破産手続開始決定後,復権を得る (免責許可決定がおりる) までの期間も限られているので,ご心配は無用でしょう。
ですから,自己破産手続を選択することで,子どもや親族の就職や結婚に支障が出るという事態は、まずあり得ません。
また,自己破産手続を選択しても,選挙権や被選挙権を失う (公民権停止)ということもありません。

第3 個人再生(民事再生)手続

個人再生 (民事再生) 手続はどのような場合に用いることができるのでしょうか?
個人再生 (民事再生) 手続 (ここでは,総支払額を大きく圧縮することが可能な小規模個人再生に限ったものとして説明いたします。) は,以下の3つの条件を充たす場合に利用することができます。
① 支払不能のおそれがあること
個人再生手続は,「支払不能のおそれ」がある場合に利用することができます (民事再生法21条1項前段,破産法15条1項) 。  このように,破産手続以上に緩やかな要件になっています。
② 債務額が5,000万円以下の個人債務者であること
法人でない,個人債務者で,住宅ローン債権や抵当権の実行等により弁済を受けることができる額を除いた債務額が5,000万円以下である場合に利用することができます。
また,ここでいう債務額は,利息制限法所定の利率による引直計算後の金額を指しますので,引直計算後の金額が5,000万円以下であれば,利用することができます。
③ 継続的にまたは反復して収入を得る見込みのある者であること
サラリーマンでなくても,小規模個人事業主などでも利用することができます。
個人再生(民事再生)手続を選択した場合,どれくらいの金額をどのように返済しなければならないのでしょうか?
(1) 弁済期間等
個人再生 (民事再生) 手続 (ここでは,総支払額を大きく圧縮することが可能な小規模個人再生に限ったものとして説明いたします。)を選択すると,弁済期間等については次のように定められています。
弁済期間は原則として3年ですが,特別の事情があるときは,5年とすることができることとなっており (民事再生法229条2項2号),3年では返済が難しいが5年であれば,返済できるときには5年で返済することができます。
個人債務者は,この3年または5年の期間,3か月に1回以上の割合で分割弁済を継続する必要があり (同項1号),一般的には毎月1回支払うことになります。
(2) 返済金額
どれくらいの金額を返済しなければならないかについては,最低弁済基準額と清算価値保障原則により算出された金額のうち,より多い金額となります。
最低弁済基準額と清算価値保障原則については,【個人の債務整理】(7) 個人再生手続 ウ 個人再生手続の概要 の「(エ) 最低弁済基準額」及び「(オ)清算価値保障原則」 をご参照下さい。
住宅 (持ち家,持ちマンション) を残しながら債務の返済額を圧縮するにはどうしたらよいのでしょうか?
個人再生 (民事再生) 手続のうちの,住宅資金特別条項付の小規模個人再生手続を選択されれば,住宅 (持ち家,持ちマンション) を残し,住宅ローンを従前どおり支払いながら,他の債務について総返済額を大幅に圧縮することが可能です。
他の債務についての総返済額は,最低弁済基準額と清算価値保障原則により算出された金額のうち,より多い金額に圧縮することができます総返済額の詳細については,Q2をご参照下さい。
なお,どのような場合に住宅資金特別条項付の個人再生(民事再生)手続を選択することができるかについては,【個人の債務整理】(7) 個人再生手続 エ 住宅資金特別条項 をご参照下さい。

第4 任意整理手続

なぜ弁護士に依頼すると債務額の圧縮が可能になるのでしょうか?
任意整理手続は,基本的に利息制限法所定の利率に引き直した (「引直計算」) 後の元金を基礎に返済する方向で和解する手続となります。
債務者の方は,本来支払う必要のない利息制限法を超える利息部分を支払ってきているので,この利息制限法を超える利息部分を元金に充当し元金の減額を図ることができ,これを「引直計算」といいます。
 引直計算の詳細については,【個人の債務整理】(4) 債務整理の方法 の脚注「引直計算」をご参照下さい。
 もっとも,引直計算を行うことにより債務額を圧縮できるのは,利息制限法の適用のある「金銭を目的とする消費貸借」 (利息制限法1条) に限られ,信販会社に対する債務のうち,貸金部分については利息制限法の適用があり債務の圧縮が可能ですが,ショッピング等による利用による立替金部分については利息制限法が適用されず (東京地判平成4年4月9日金融法務事情1351号37頁等) ,債務額を圧縮することができません。
また,銀行や信金・信組からの借入などの場合も,利息制限法に定める上限利率以下の利率での貸付となっているため,弁護士に依頼されても債務額を圧縮することはできません。
ただし,こういった場合であっても,「クレジット・サラ金処理の東京三弁護士会統一基準」どおりに和解することができれば,遅延損害金等をカットすることができ,債務額を圧縮することが可能です (この点の詳細はQ2をご参照下さい。)。
任意整理手続を選択した場合,既に発生している利息・遅延損害金や将来利息を支払わないで解決することができるのでしょうか?
「クレジット・サラ金処理の東京三弁護士会統一基準」のうち,任意整理における和解案 (弁済案) の提示にあたっては,貸金業者と債務者との最終取引日 (借入または返済) 以降の利息をつけないことが定められており,貸金業者にこの基準に従ってもらうことができれば,既に発生している利息・遅延損害金のうち,貸金業者と債務者との最終取引日以降に発生する利息・遅延損害金 (分割払いとなった場合の将来利息を含む。)を支払わずに解決することが可能です。
なお,「クレジット・サラ金処理の東京三弁護士会統一基準」の詳細については,【個人の債務整理】(5) 手続選択の基準 の脚注「クレジット・サラ金処理の東京三弁護士会統一基準」をご参照下さい。
しかし,近時,支払日までの利息・遅延損害金を含めた金額の一括払いでないと和解しないと述べたり,分割払いは認めても最終取引日以降の利息・遅延損害金のみならず将来利息も含めて支払わないと和解しないと述べたりする貸金業者が増加し,任意整理手続を選択することが困難な事例が増えていますので,注意が必要です。
他の手続ではなく任意整理手続を選択することにはどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか?
債務整理を行うことによるメリット・デメリットについては,第1「債務整理全般」のQ2「債務整理を行った場合のメリット・デメリットはどういうものがありますか?」をご参照下さい。
任意整理手続のメリットは,大きく次の3つです。
① 支払不能,支払不能のおそれがあると認められないときでも利用可能なこと
自己破産手続,個人再生 (民事再生) 手続においては,支払不能または支払不能のおそれがあることが要件となっていますが,任意整理手続については債権者との間の和解交渉により決めるものなので,このような要件は求められません。
② 特定の債権者に対してだけ従来どおりの支払を続けることが可能なこと  自己破産手続,個人再生 (民事再生) 手続においては,特定の債権者に対してだけ従来どおりの支払を続けることは不可能ですが,任意整理手続においては理論的には可能です。
ただし,その債務について従来どおりの支払を続けた場合には任意整理手続として債務の返済が不可能な場合には任意整理手続の遂行ができなくなってしまうので,注意が必要です。
③ 住宅に住宅ローン以外の後順位抵当権者が設定されているようなときでも利用可能なこと
このような場合,後順位抵当権者との交渉が成功しその後順抵当権者が抵当権を抹消してくれるような希有な例を除き個人再生 (民事再生) 手続を活用することができませんが,任意整理手続であればその後順位抵当権者との和解が成立すれば住宅を残しながら債務を返済することが可能です。

他方,任意整理手続の最大のデメリットは,自己破産手続にように債務を返済する責任がなくなったり個人再生 (民事再生) 手続のように返済額を大幅に圧縮することができなかったりすることにあります。

第5 過払金回収手続

なぜ過払金が発生することがあるのでしょうか?
消費者金融会社 (サラ金) 等の貸金業者は利息制限法を超え,出資法の上限金利に近い利息を取り続けていました。
利息制限法を超過するが出資法を超えない利息のことを,「グレーゾーン金利」といいます。
債務者の方は,本来支払う必要のない利息制限法を超える利息部分を支払ってきているので,この利息制限法を超える利息部分を元金に充当し元金の減額を図ることができ,これを「引直計算」といいます。
たとえば,年29.2%の約定で貸金業者との間で100万円を借りている債務者の方が毎年29万円ずつ返済していると,そのままですと元金は増えていく一方です。
しかし,利息制限法に基づく利息は年15%ですので,引直計算を行うと,毎年14万円ずつ元金が減っていくことになります。
こうして,おおむね5年から7年以上,消費者金融会社 (サラ金) 等の貸金業者との間で借入と返済を繰り返していると,元金が0円になり,それでもさらに返済を続けることになりますので,過払金が発生しその金額がどんどん増えるということになります。
また,従来,貸金業法 (旧称:貸金業の規制等に関する法律) 旧43条においては,一定の要件を充たす場合には,利息制限法を超える利息を取っても,有効な利息の債務の弁済とみなすという規定があったのですが,少なくとも従前貸金業者と顧客との間で取り交わされていた契約書のもとではこのみなし弁済規定が適用されることもありえなくなっています。
そのため,過払金が発生することがあります。
なお,過払金が発生する理屈の詳細については,【個人の債務整理】(9)過払金回収手続 ウ 過払金回収手続の概要 をご参照下さい。
古くから取引をしているので,貸付や返済の証拠をすべて廃棄してしまったのですが,それでも過払金を回収することができますか?
貸金業者等からの債務について依頼者の方が主債務者となっていて,他に (連帯) 保証人の方がいる場合で,その (連帯) 保証人については債務整理を依頼されていないときには,主債務者が分割払いをしている場合でも,主債務者が支払を停止したことにより期限の利益を喪失し (債務の支払を怠った場合に債務者が分割弁済する利益を失うこと),貸金業者が (連帯) 保証人に対して,一括弁済を求めることができるようになります。
貸金業者に対する債務を完済してからしばらく経つのですが,それでも過払金を回収することができるのでしょうか?
過払金返還請求権の消滅時効期間について,最判昭和55年 1月24日民集 34巻1号61頁は,「利息制限法所定の制限をこえて支払われた利息・損害金についての不当利得返還請求権は,法律の規定によつて発生する債権であり,しかも,商事取引関係の迅速な解決のため短期消滅時効を定めた立法趣旨からみて,商行為によつて生じた債権に準ずるものと解することもできないから,その消滅時効の期間は民事上の一般債権として民法167条1項により10年と解するのが相当である。」と述べ,10年となっています。
また,消滅時効期間についていつから起算すべき (計算すべき)かについては,最高裁平成21年 1月22日民集 63巻1号247頁が,「過払金充当合意を含む基本契約に基づく継続的な金銭消費貸借取引においては,同取引により発生した過払金返還請求権の消滅時効は,過払金返還請求権の行使について上記内容と異なる合意が存在するなど特段の事情がない限り,同取引が終了した時点から進行するものと解するのが相当である。」とし,取引終了日から起算すべき (計算すべき) となっています。
「取引終了日」が「最終取引日」を指すとしても,貸金業者に対する債務完済後から10年を経過していなければ過払金を回収することが可能となります。

第6 法人の債務整理

資金繰りに行き詰まりつつあるのですが,債務整理にはどのような方法があるのでしょうか?
弁護士が依頼を受けた場合の法人の債務整理の方法としては,民事再生手続,会社更生手続,破産手続,特別清算手続及び私的整理 (任意整理) 手続の5つがあります。
どの方法を選択するかは一概には言えませんが,資金繰りに行き詰まりつつある状況で,金融機関が追加融資に応じてくれなかったり,いわゆるリスケジュールに応じてくれなかったりする場合には,法的手続によらなければならないことが多いでしょう。
再建型の手続である会社更生手続や民事再生手続は債務の返済額を圧縮しさえすれば事業再建の見通しが立つことが求められることから,現実には破産手続を選択せざるを得ないことが多くなっています。
なお,この点についての詳細は,【法人の債務整理】(5) 手続選択の基準 をご参照下さい。
法人を経営していますが,事業をめぐる状況も困難で後継者も不在のため事業を閉鎖しようと思うのですが,どうすればよいのでしょうか?
資産を全部売却して債務の返済に充ててもなお黒字を見込むことができる場合には清算手続を選択することができますが,それ以外の場合には特別清算手続もしくは破産手続を選択する必要があります。
法人全体としては大赤字を計上して資金繰りにも行き詰まっているのですが,大幅な黒字を計上し今後の伸びも期待できる部門があります。どのような債務整理が可能ですか?
法人全体が立ちゆかないとしても,その黒字で今後の伸びも期待できるという有望な部門があるのであれば,その部門に所属する従業員の雇用を守るように努力するのが経営者の務めといえるように思います。
そのため,その有望部門とそれ以外の部門を切り離すことができないかをまずは考えるべきでしょう。
法人全体としても返済額を圧縮しさえすれば立ち直る可能性があれば民事再生手続を選択することが考えられますし,法人全体としては立ち直る見込みがなくともその有望部門のみ切り離して他の企業に営業譲渡するといった方法も考えられます。

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