過払金返還請求訴訟と「悪意の受益者」 4
2012/01/05
最高裁平成19年7月13日判決(民集61巻5号1980頁)及び最高裁平成19年7月13日判決(裁判集民事225号103頁)については,「過払金返還請求訴訟と『悪意の受益者』 2」で,最高裁平成21年7月10日判決(民集63巻6号1170頁)については,「過払金返還請求訴訟と『悪意の受益者』 3」で,それぞれ紹介しました。
では,前2者の判決と後者の判決の相違が生じるのはどうしてでしょうか。
滝澤孝臣裁判官(東京高等裁判所判事/知的財産高等裁判所勤務)は,「過払金返還請求訴訟に関する裁判例の概観」(『別冊判例タイムズ33 過払金返還請求訴訟の実務』所収)において,前2者の判決を含む一連の判決について,みなし弁済規定の適用要件のうち,書面性要件に関する認識が問題となったものであるのに対し,後者の判決を含む一連の判決については任意性要件に関する認識が問題となったものであるという違いがあるとされています。
そして,同裁判官は,書面性要件については,貸金業者の自律的な判断が可能であって,みなし弁済規定の適用要件を具備する書面を作成して債務者に交付する立場にある以上,その判断は,みなし弁済規定の適用を受け得るに足りるものでなくてはならないはずであるとされています。
これに対し,任意性要件については,裁判例にも対立があって,貸金業者に自律的な判断を期待することが不可能ないし困難であって,みなし弁済規定の適用を受け得るに足りる判断を要求し得ない事情があるといえるとされています。
この見解に対してはなるほどと思う部分もあるのですが,個人的には,書面性要件と任意性要件とで,「貸金業者の自律的な判断が可能かどうか」という根本的な部分について,なぜにそれほど大きな差異が生じるのか説明しきれていないようにも思います。
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