川崎パシフィック法律事務所
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過払金返還請求訴訟における一部弁済の充当 1

過払金返還請求訴訟における一部弁済の充当 1

2012/04/14

 過払金返還請求訴訟においては,従来,訴訟外(略して訴外といいます。)または訴訟上で和解をすることが多く,判決まで至ることはあまりありませんでした。
 訴訟提起をしなかったり訴訟提起をした場合でも貸金業者からの提案どおり安易に和解されているケースを多く見てきたりそのような話を聞いたりすることも多いのですが,私の場合,依頼者の利益を最大化するため,安易な和解に応じることなくきているものと自負しております(なお,この方針は当事務所開設して以後も徹底しておりますので,今では当事務所の方針となっています。)。
 
 そのような方針を固めると,概ねこの弁護士は安易な和解に応じないというのを貸金業者にも認識してもらえるようになるのですが,一部貸金業者との間ではなかなか和解ができず,判決を取得せざるを得なくなる例も多くなっています(貸金業者にとっては遅延損害金がかさみ,支払額がその分多くなるだけなので百害あって一利なしだとも思うのですが・・・。)。

 ところで,当事務所がこのように安易な和解に応じないからでしょうが,近時,過払金返還請求訴訟(不当利得返還請求訴訟)を提起し,貸金業者からの和解提案額について低額にすぎることを理由に拒絶すると,
「和解できないのは理解したが,訴訟における主張額の一部だけでも弁済させてくれ。
 そして,その弁済額を過払金元金に充当させてくれ。」
という対応が一部貸金業者からなされるようことが増えてきました。

 過払金については,よほどのことがない限り,過払金発生時から年5%の利息が発生します(「ウ 過払金回収手続の概要」参照)。
 
 400万円(過払金元金)及びこれに対する平成23年1月1日から支払済みまで年5パーセントの割合による金員の支払を求める訴訟を提起した場合で,平成24年1月1日に貸金業者が50万円を支払い,判決で認められた残金の支払日が平成25年1月1日だった場合を考えてみます。

 利息に優先的に充当された場合
 貸金業者の弁済金がまず利息に充当されるとすると,1年間の利息金は400万円の5パーセントで20万円となります。
 判決では,「370万円及びこれに対する平成24年1月1日から支払済みまで年5パーセントの割合による金員を支払え。」ということになります。
 1年間の利息金は370万円の5%で18万5000円ですから,平成25年1月1日には388万5000円を支払ってもらえ,先に一部支払ってもらった50万円と併せると438万5000円を取得できるということになります。

 過払金元金に優先的に充当された場合
 他方,貸金業者の弁済金が過払金元金に充当されるとすると,判決では,「350万円及びこれに対する平成23年1月1日から支払済みまで年5パーセントの割合による金員を支払え。」ということになります。
 2年間の利息金は350万円の10%で35万円ですから,平成25年1月1日には385万円を支払ってもらえ,先に一部支払ってもらった50万円と併せると435万円を取得できるということになります。

 この差を大きいと見るか小さいと見るかについては意見が分かれるでしょうが,依頼者の利益を最大化するという観点からすれば,法の専門家である弁護士が無視してはいけない数字ではないかと思います。

 ちなみに,貸金業者が一部弁済をしなかった場合には,「400万円及びこれに対する平成23年1月1日から支払済みまで年5パーセントの割合による金員を支払え。」という判決が出るため,2年間の利息金は400万円の10%で40万円ですから,440万円を取得できることになり,一部弁済をしてもらわないほうが得ということになるのですが,一部弁済を拒絶するのは弁護士倫理上問題があるので,貸金業者のほうで一部弁済したいという場合には拒絶できないと思われます。

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