司法修習生の貸与制
2011/08/05
私たち弁護士だけでなく,裁判官や検察官になるためには,司法試験に合格しただけですぐに職に就けるのではなく,1年の司法修習(昔は2年だったのが私のころには1年6か月になっており,現在では1年に短縮されています。)を経る必要があります。
司法試験は少なくとも以前は難関試験でしたが,あくまでも法律学の基礎力を問うものであり,実務に就いたときにはその知識だけでは到底十分なものではありません。
その実務に必要な最低限の知識を身に付けるのが司法修習の時期であり,その意義は非常に重要なものがあります。
この司法修習期間中,今まではずっと給与が支給されていましたが,これを貸与制にする動きが強まっています。
「修習生の給費制打ち切り=11月から貸与制-政府」
この記事には次のように記載されています。
政府は4日午前、法曹養成改革に関する関係省庁副大臣らの検討会議を法務省で開き、司法修習生に月額約20万円を支払う「給費制」を打ち切り、11月から無利子の「貸与制」に移行する方針を確認した。また、奨学金返済を抱える低所得者の負担軽減策を講じることでも一致した。8月末に同会議を開き、正式に決定する。(2011/08/04-12:29)
司法修習が貸与制になった場合,弁護士になったときには多額の借金を背負っているというのが常態化することになりますし,優秀な人材が法曹の道を目指さなくなることを懸念します。
私たち弁護士の職務は,個人の方であれば人生の岐路となったり法人であればその法人の命運を決するような場面にも携わるもので,一定の質を確保することが非常に重要です(もちろん,裁判官や検察官が優秀である必要があります。)。
また,どのような弁護士が優秀なのかどうかは非常に外部からはわかりにくいところがあります。
その理由として,広告宣伝が十分でないからというのもありえるでしょうが,どうしてもその職務の善し悪しについて一般の方が判断しづらいという職務の性質を挙げることができます。
そのため,広告宣伝や口コミ等により質が低い弁護士が自然と排除されるという自由競争が働きにくい要素が強いところがあります。
このように,重要な職務を担っているにもかかわらず,その善し悪しがわかりにくいことから,一般の方が一定の質を確保できていない弁護士に依頼するということはよくあり得る話です。
ただでさえロースクール導入及び司法試験合格者激増により法曹の質の低下がささやかれている状況であるのに,貸与制を導入した結果,質の低下に歯止めがかからなくなる可能性すらあると思います。
その場合,その被害は一般市民の方に生じてしまうということが一番の問題ではないかと思います。
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