第5回高校生模擬裁判選手権
2011/08/07
昨日(H23.8.8(土)),主催:日本弁護士連合会(日弁連),共催:最高裁判所,法務省,検察庁,大阪・福岡・高松各地方裁判所,横浜弁護士会ほか全15弁護士会,関東・近畿・四国各弁護士会連合会により,「第5回高校生模擬裁判選手権」が開催されました。
この高校生模擬裁判選手権については,日弁連が次のような説明をしています。
「この大会は,1つの事件を素材に,法律実務家の支援を受けながら,参加各校が検察チーム・弁護チームを組織し,高校生自身の発想で争点を見つけ出し,整理し,模擬法廷で証人尋問・被告人質問を行います。
刑事法廷で要求される最低限のルールに則り,参加各校の生徒が検察側と弁護側に分かれ模擬裁判を行う経験を通じて,物事のとらえ方やそれを表現する方法を学び,刑事手続の意味や刑事裁判の原則を理解することをねらいとしています。」
本年度の題材は,強盗致傷罪(刑法第240条前段)。
公訴事実(裁判の対象となっている事実)の概要は次のとおり。
被告人が,デパート内の宝石店において,交際相手にプレゼントするための指輪購入のため,宝石店の店主おすすめの指輪を5個見せてもらっている際,上記店主がほかの客の応対に手を取られている隙に,そのうちの1個を自分の上着左ポケットに入れて立ち去ったところ,指輪が1個なくなっていることに気づいた上記店主が被告人を追いかけたところ,被告人が逮捕を免れるため,右手のげんこつで店主の左顔面(左ほほ)を殴り,店主に全治2週間を要する打撲傷を負わせたというもの。
被告人のほうでは,概要次のような弁解をしています。
①通行人とぶつかった際に手に持っていた指輪が偶然左ポケットに入っただけで,指輪がどこに行ってしまったかわからなくなって責任をとらされるのが怖くなり宝石店から立ち去ろうとしただけであって,指輪を盗むつもりなどなかった。
②店主が追いかけてきて後ろから被告人の左肩をつかんだので,被告人がそれを振り払おうと思って左腕を回したところ,その左腕の肘が,偶然,店主の左ほほに当たっただけで,殴る意志(暴行の意志)がない。
法律家の目から見ると,
①左ポケットから指輪が発見されたという事実自体で盗む意志があったことが強く推認されるものである上,通行人とぶつかった際に手に持っていた指輪が偶然左ポケットに入るなどということはまずあり得ない
②左肩をつかまれたときに左腕を回したところ,その左腕の肘が,偶然,店主の左ほほに当たるということ事態考えにくい上,その程度のことで全治2週間を要する打撲傷が生じるとも考えにくい
ということで,弁護側が相当苦しい題材だと思います。
高校生は,検察側と弁護側とに分かれ,実際の裁判に沿って,
人定質問(被告人が本人かどうか確かめる手続)
→検察側による起訴状朗読
→黙秘権等の告知
→罪状認否(被告人及び弁護側に対してどの事実を認め,どの事実を争うか確認するもの)
→検察側による冒頭陳述(検察側が証拠によって証明しようとする事実を明らかにするもの)
→弁護側による冒頭陳述(弁護側が証拠によって証明しようとする事実を明らかにするもの)
→宝石店店主の尋問(検察側による主尋問,弁護側による反対尋問,場合により検察側による再主尋問)
→被告人質問(弁護側による主質問,検察側による反対質問,場合により弁護側による再主質問)
→検察側による論告(これまでに取り調べられた証拠により被告人が有罪であることを述べるもの)
→弁護側による弁論(これまでに取り調べられた証拠により被告人が無罪であることを述べるもの)
→被告人による最終意見陳述(最後に一言意見を述べるもの)
が行われました。
高校生が,支援弁護士等のちょっとした助言を受けるだけで,自分たちで考えて,冒頭陳述や論告・弁論,尋問事項を考える必要があるので,大変ながんばりが求められるものになっています。
それにもかかわらず,なかなかポイントを突いているなと思わせられるものが多く,感心します。
そのため,一般の方からみても興味を持ってみていただけるいいイベントに仕上がっていると思います(そういう一般の方がみても楽しめるイベントが日弁連主催のものとしてはきわめて稀,というのが一弁護士としては残念に思うところですが・・・)。
この高校生模擬裁判選手権については,本年度,関東・近畿・四国各大会が開催されました(これに優勝したからといって全国大会があるわけではないのがちょっと残念。)。
神奈川県下の高校として湘南白百合学園高等学校が関東大会に出場しており(第1~4回までは公文国際学園高等部も出場していましたが,残念ながら本年度は不参加。),私の所属する横浜弁護士会法教育委員会委員が同校の支援弁護士となっていることもあり(本年度の支援検事が大学・司法研修所の同期の友人だったこともあります。),8月1日(月)に開かれた同校のリハーサルも見学させてもらっていました。
その縁で,本年度は午前中も午後も湘南白百合学園高等学校の試合を観戦しておりました。
湘南白百合学園高等学校については,リハーサルのときの内容は正直言ってもう一つだったのですが,1週間も経たないうちに見違える内容になっていました。
専門家と比べてもそれほど遜色ないレベルに到達していたのではないかと思います。
高校生おそるべし,というところです。
湘南白百合学園高等学校の対戦校2校(都立小石川高等学校,千葉県立東葛飾高等学校)の両校もかなりのレベルに仕上がっていましたので,私が観戦していない他の5校もかなりのレベルにあったものと推測されます。)
そして,結果は,リハーサルのときから大きく成長した姿を見せてくれた湘南白百合学園高等学校が優勝(なんと5連覇達成!!)
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