過払金返還請求訴訟と「悪意の受益者」 6
2012/01/07
最高裁平成2年1月22日判決(民集44巻1号332頁)及び最高裁平成18年1月13日判決(民集60巻1号1頁)については,「過払金返還請求訴訟と『悪意の受益者』 5」で紹介したとおりです。
私が弁護士登録したのは平成17年10月であるため,上記最高裁平成2年1月22日判決以後の状況について偉そうに語る資格はないのですが,上記最高裁平成18年1月13日判決が出るまでの間,みなし弁済規定の任意性要件を充たさないとする下級審裁判例はきわめて少数のようですし,そのような学説も皆無といってよいようです(過払金返還請求訴訟はあまり学者の先生方の対象テーマにはなっていないようですし,裁判例が出なければ学術対象とはならないようなのでやむを得ないのでしょうが・・・)。
他方,みなし弁済規定の書面性要件に関しては,厳格に解釈する下級審裁判例が圧倒的で,貸金業者よりの学者でさえ裁判例は厳格説を採っていることが多いと認めている状況にありました。
そのような状況を踏まえ,みなし弁済規定の書面性要件が争点となっている事案について,厳格説に基づいた最高裁判例が積み重なりました。
これまで述べてきたとおり,「悪意の受益者」であるかどうかについては,「貸金業者が利息制限法1条1項所定の制限を超える利息を受領したが,その受領につき貸金業の規制等に関する法律43条1項の適用が認められない場合には,当該貸金業者は,同項の適用があるとの認識を有しており,かつ,そのような認識を有するに至ったことについてやむを得ないといえる特段の事情」の有無によって決せられます。
そして,下級審裁判例や学説においては,みなし弁済規定の書面性要件については厳格に考える見解が多数である一方,任意性要件については厳格に考える見解が多数とは到底いえない状況であった以上,上記「特段の事情」の有無についても結論を異にすることとなっているといえると思います。
すなわち,このような違いがあるために,「過払金返還請求訴訟と『悪意の受益者』 2」で紹介した最高裁平成19年7月13日判決(民集61巻5号1980頁)及び最高裁平成19年7月13日判決(裁判集民事225号103頁)と,「過払金返還請求訴訟と『悪意の受益者』 3」で紹介した最高裁平成21年7月10日判決(民集63巻6号1170頁)との相違が生じているといえるのではないかと思うのです。
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