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過払金返還請求訴訟と「悪意の受益者」 7

過払金返還請求訴訟と「悪意の受益者」 7

2012/01/08

  これまで述べてきたとおりの最高裁の流れを踏まえ,みなし弁済規定の書面性要件を充たさない場合に,「悪意の受益者」に該当するかどうかについて,下級審裁判例の大半は,従来から厳格な考え方を採り,「悪意の受益者」に該当するという判断が圧倒的でした。
 しかし,なかには,緩やかな考え方を採り,貸金業者が「悪意の受益者」に該当しないという判断を示す下級審裁判例も存在していました。

 みなし弁済規定が適用されるためには,貸金業法(平成18年法律第115号による改正前のもの。以下同じ。)17条1項所定の事項を記載した書面(以下「17条書面」という。)として顧客に交付するべき各書面には,同項6号に掲げる「返済期間及び返済回数」や貸金業法施行規則(平成19年内閣府令第79号による改正前のもの。以下同じ。なお,同改正前の題名は貸金業の規制等に関する法律施行規則)13条1項1号チに掲げる各回の「返済金額」(以下,「返済期間及び返済回数」と各回の「返済金額」を併せて「返済期間,返済金額等」という。)を必ず記載しなければなりません。
 しかし,貸金業者の大半が利用しているリボルビング払いの場合,従来,これらに代わるものとして「次回の最低返済額とその返済期日の記載」がされていたにとどまっていました。

 このような場合に,貸金業者が「悪意の受益者」に該当するか否かに関し,今般,立て続けに3件の最高裁判決が出たのです。
 このうち,裁判所ウェブサイト(「CFJ(合)に対する最高裁平成23年12月1日判決」)にも登載されているのが,「名古屋消費者信用問題研究会」の「会員等の判決」中の「悪意の受益者」に掲載されている,「平成23年12月1日最高裁判決 第一小法廷(CFJ)」です。

 この事案の概要は次のとおりです。

(1) 被上告人(CFJ合同会社),アイク株式会社及び株式会社マルフクは,貸金業法(平成18年法律第115号による改正前の法律の題名は貸金業の規制等に関する法律。以下,同改正の前後を通じて「貸金業法」という。)3条所定の登録を受けた貸金業者である。

(2) アイクは,上告人(顧客)との間で,平成8年8月13日から平成14年12月30日までの間,原判決別紙「計算書1 Xアイク取引」の「貸付金額」欄及び「入金額」欄記載のとおり,継続的な金銭消費貸借取引を行った。被上告人は,平成15年1月1日にアイクを吸収合併して上記金銭消費貸借取引に係る貸主の地位を承継し,引き続き上告人との間で,同月31日から平成21年11月1日までの間,同別紙の「貸付金額」欄及び「入金額」欄記載のとおり,継続的な金銭消費貸借取引を行った(以下,アイク及び被上告人と上告人との間の上記取引を「第1取引」という。)。

(3) マルフクは,上告人との間で,平成9年2月18日から平成14年4月4日までの間,原判決別紙「計算書2 Xマルフク取引」の「貸付金額」欄及び「入金額」欄記載のとおり,継続的な金銭消費貸借取引を行った。被上告人は,同年5月2日にマルフクから上記金銭消費貸借取引に係る上告人に対する債権の譲渡を受け,引き続き上告人との間で,同月7日から平成21年11月1日までの間,同別紙の「貸付金額」欄及び「入金額」欄記載のとおり,継続的な金銭消費貸借取引を行った(以下,マルフク及び被上告人と上告人との間の上記取引を「第2取引」といい,第1取引と第2取引を併せて「本件各取引」という。)。

(4) 本件各取引は,基本契約の下で,借入限度額の範囲内で借入れと返済を繰り返すことを予定して行われたもので,その返済の方式は,全貸付けの残元利金について,毎月の返済期日に最低返済額を支払えば足りるとする,いわゆるリボルビング方式の一つである。

 本件各取引において貸金業法(平成18年法律第115号による改正前のもの。以下同じ。)17条1項所定の事項を記載した書面(以下「17条書面」という。)として上告人に交付された各書面には,同項6号に掲げる「返済期間及び返済回数」や貸金業法施行規則(平成19年内閣府令第79号による改正前のもの。以下同じ。なお,同改正前の題名は貸金業の規制等に関する法律施行規則)13条1項1号チに掲げる各回の「返済金額」(以下,「返済期間及び返済回数」と各回の「返済金額」を併せて「返済期間,返済金額等」という。)に代わるものとして,平成16年9月までは,次回の最低返済額とその返済期日の記載がされていたにとどまり,同年10月以降になって,個々の貸付けの時点での残元利金について最低返済額を毎月の返済期日に返済する場合の返済期間,返済金額等の記載(以下「確定的な返済期間,返済金額等の記載に準ずる記載」という。)がされるようになった。

(5) 本件各取引において上告人がした各弁済(以下「本件各弁済」という。)のうち制限超過部分の支払は,貸金業法43条1項の適用要件を欠き,有効な利息の債務の弁済とはみなされない。制限超過部分を各貸付金の元本に充当すると,第1取引については平成13年2月1日以降,第2取引については平成16年6月30日以降,終始過払の状態が継続していた。

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