第7回高校生模擬裁判選手権 8
2013/08/25
前回までの記載内容を踏まえてどのような事項を尋問するかということになるわけですが
(とりわけ,たびたび引用している前回ブログは 第7回高校生模擬裁判選手権 7 をご覧下さい。),
(1)検察官請求の見田奈々子証人尋問においては,
ア 検察官としては,
(ア)その供述が一貫・安定しているかという点(前回ブログ(3)ア)に即し,捜査段階か
ら「死亡推定時刻の直前に,被告人が博に対して怒鳴りつける声を見田奈々子が
聞いたという証言」をずっと一貫して述べていたことを引き出す,
(イ)その供述が具体的,詳細,自然,合理的であるか,その供述に迫真性,臨場性
があるかという点(前回ブログ(3)エ)に則し,どのような状況で上記証言を聞いた
か,そのときの心理状態はどうかといった部分をできるだけ具体的に引き出す,
(ウ)供述の根拠という点(前回ブログ(3)オ)に即し,なぜ被告人の声だといえるのか
(電話では聞き間違えたことがあるというのであるから,電話を通じてでなければ
間違えないというところ)を引き出す,
(エ)供述の立場はどうか。嘘をついたり,隠したりする動機があるかという点(前回
ブログ(3)カ)に即し,見田奈々子が被告人に悪い感情を抱いていない,むしろ
同情的であることを引き出す,
(オ)観察の正確性という点(前回ブログ(4)ア)に即し,どれくらいの距離で上記証
言を聞いたか,そのときの周囲の音の状況はどうだったかといった点や,証人
の聴力に問題がないことを引き出す,
といったところがポイントになるでしょうか。
イ 他方,弁護人としては,
供述の根拠という点(前回ブログ(3)オ)に即し,まずは,被告人と博の声が似ていることと,電話では聞き間違えたことがあるということを引き出すことが肝要です。
そして,博の声だったかもしれないという供述まで引き出せればベストですが,そこまでいかなくとも,「電話では聞き間違えたことがある」ということから,「どちらがどちらの声というのは発言内容からそう判断したにすぎない。」,「面と向かった場合以外で被告人と博の声のいずれであるか判断したことはない。」といった事項くらいは引き出したいところです。
(2)被告人質問においては,
ア 弁護人としては,
(ア)その供述が一貫・安定しているかという点(前回ブログ(3)ア)に即し,灰皿を掃除
する際にはいつもこのような仕方をしているという供述は捜査段階から一貫してい
ることを引き出す,
(イ)その供述が客観的な事実と合致しているか,矛盾しているかという点(前回ブログ
(3)イ)に即し,掃除している際の動作を示してもらうなどして掃除している際の動
作と指紋の付着の仕方とが矛盾しないことを引き出す,
(ウ)その供述が具体的,詳細,自然,合理的であるか,その供述に迫真性,臨場性
があるかという点(前回ブログ(3)エ)に即し,掃除している際の動作の説明を細
かく再現し,イメージしてもらえるように引き出す,
といったところがポイントになるでしょうか。
イ 他方,検察官としては,
その供述が客観的な事実と合致しているか,矛盾しているかという点(前回ブログ(3)イ),その供述の根拠は何かという点(前回ブログ(3)オ)に即し,掃除し終わった後にガラス製灰皿を持ち歩いたときではなく,掃除の際に指紋が付着していることを引き出して,またガラス製灰皿を水洗いなどしておらずウェットティッシュ等で軽く拭いただけの掃除の仕方であることを引き出して,さらにこのような掃除の仕方だと灰皿の内側に触れた手指にタバコの灰が付着することを指摘し,被告人の弁明が客観的事実と合致せず,また弁明に根拠がないことを明らかにしていきたいところです。
このような点に意識できると,高校生模擬裁判選手権における生徒さんたちの尋問もよりよいものとなるのではないでしょうか。
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