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離婚協議中につき別居している場合の子ども手当の支給 2

離婚協議中につき別居している場合の子ども手当の支給 2

2011/11/23

 平成23年10月からの子ども手当の概要については,「離婚協議中につき別居している場合の子ども手当の支給 1」記載のとおりですが,「平成23年10月からは,別居中の両親が生計を同じくしていないような場合(離婚協議中につき別居している場合)は,お子さんと同居している方に支給される」ことがどのような意味合いを持つかについては,今までの制度について振り返ってみる必要があります。

 今までの制度の問題点については,「日本弁護士連合会平成22年10月29日付『子ども手当の支給に関する要望書』」に詳述されています。
 以下,これに依りながら説明いたします。

 いわゆるDV被害者の場合には,子ども手当給付がはじまる前に導入された「定額給付金」でも,子どもたちと一緒に避難しているDV被害者が給付金を受けられないという問題が発生したのですが,行政の対応により「配偶者からの暴力の被害者の保護に関する証明」があれば給付を受けられることになりました。
 従来の子ども手当制度においても,同様に,DV被害者は,行政から「配偶者からの暴力の被害者の保護に関する証明」(一時保護や来所相談の証明)が発行されれば,世帯主が子ども手当の受給申請をして既に受給している場合でも,子ども手当の支給を受けられる取り扱いがなされました(平成20年5月9日雇児発第0509004号「児童虐待・DV事例における児童手当関係事務処理について」)。
 なお,「児童虐待・DV事例における児童手当関係事務処理について」に興味がおありの方は,「平成20年5月9日雇児発第0509004号『児童虐待・DV事例における児童手当関係事務処理について』」をご覧下さい。

 そして,DV被害者が手当を受けるための手続は,
①DVであることの証明書を行政機関より取得し,
②その証明書を付けて市区町村で受給資格の認定の申請をする。
 すると,
③市区町村から子ども手当の受給者の受給事由が消滅したという情報が都道府県にあげられ,
④都道府県は現に子ども手当を受給している世帯主の居住する市区町村に連絡をして,市区町村は職権で支払を止め,
⑤申請者の受給資格が認定され支給が開始される,
という流れになっていました。

 もっとも,「配偶者からの暴力の被害者の保護に関する証明」があっても,なお既に子ども手当の支給を受けているDV加害者からの受給事由消滅届の提出を求める市町村もあり,この取扱いについては全国の市町村で統一されておらず,そのために子ども手当を受給できない場合が生じているという問題点が指摘されていました。

 とはいえ,DV被害者の場合には,この問題さえクリアできれば給付してもらえていたのです。

 ところが,DV被害者以外の場合には,次のような問題があったのです。

(1) 平成22年6月以降に別居を開始した夫婦の場合
 一方配偶者が子どもを連れて別居している場合,その一方配偶者が,自らが子ども手当の受給資格者であると申請をしても,既に世帯主である他方配偶者が受給資格者として認定を受けていた場合には,「平成22年度における子ども手当の支給に関する法律施行規則」7条の受給事由消滅届を自治体に提出しない限り,子どもと同居している一方配偶者が子ども手当を受給することはできないとの運用がなされていました。
 つまり,一度受給資格者となった者は,その後,子どもを監護しなくなっても受給事由消滅届を提出しない限り,自動的に受給資格者とされてしまっていたのです。
 そのうえ,別居している夫婦の場合には,通常,他方配偶者に受給事由消滅届を提出するような協力を期待することはできないため,現に子どもを抱えた配偶者が受給資格者としての認定を得ることができなかったのです。

(2) 平成22年6月以降に離婚した夫婦の場合
 別居開始したのみならず,離婚成立にまで至っている場合にも不都合が生じていました。
 平成22年6月の手当支給開始時にはまだ婚姻関係にあり,他方配偶者が子ども手当を受給していたが,その後離婚が成立し,一方配偶者が子どもの親権者となり新たに監護している子どもとともに世帯を構成して子ども手当の受給を申請しても,他方配偶者が上記のように規則7条に基づく受給事由消滅届を提出しない限り,子ども手当を受給することはできない運用となっていました。
 そのため,監護者であり,かつ,子どもと生計を同じくしながらも,一方配偶者は子ども手当を受給できませんでした。

 つまり,従前は,DV事件以外には,子どもを監護しなくなった世帯主の協力なしには,子ども手当の支給を求めることができなかったのです。

 今回の制度改正は,この点について変更となっているので,実務上重要なものといえるでしょう。

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