川崎パシフィック法律事務所

17 不当利得返還請求または不法行為に基づく損害賠償請求

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17 不当利得返還請求または不法行為に基づく損害賠償請求

17 不当利得返還請求または不法行為に基づく損害賠償請求

(1) 遺産分割の前提問題

遺産分割の前提問題のうち,以下のア~エについては,当事者間で遺産分割で処理することに合意に達しない限り,不当利得返還請求または不法行為に基づく損害賠償請求によって処理しなければなりません。 ア 被相続人名義預金口座から引き出された金員(使途不明金を含む。)の問題 イ 葬儀費用等の費用の清算の問題 ウ 遺産管理費用の清算の問題 エ 遺産収益(相続開始後の賃料,配当金など)の分配の問題

遺産分割の前提問題のうち,以下のア~エについては,当事者間で遺産分割で処理することに合意に達しない限り,不当利得返還請求または不法行為に基づく損害賠償請求によって処理しなければなりません。

ア 被相続人名義預金口座から引き出された金員(使途不明金を含む。)の問題
イ 葬儀費用等の費用の清算の問題
ウ 遺産管理費用の清算の問題
エ 遺産収益(相続開始後の賃料,配当金など)の分配の問題

(2) 被相続人名義預金口座から引き出された金員(使途不明金を含む。)の問題

ア 被相続人の生前または死亡後に,被相続人名義預金口座から金員が引き出されることがあります。

イ 被相続人の生前に金員が引き出された場合でも死亡後に引き出された場合でも,その引き出された金員を誰が取得したかわからなかったとき(より厳密に言えば誰が取得したか証明できないとき/使途不明)には,その引き出された金員は存在しないものとして扱われます。

ウ 他方,引き出された金員について特定の相続人が取得したことがわかったとき(より厳密に言えば特定の相続人が取得したことを証明できたとき)には,その引出しが被相続人の生前になされたもので,かつ被相続人が当該相続人に対し贈与する意思があったと認められるときには,その引き出した金員については特別受益の問題として処理することとなります。

なお,引き出された金員について相続人以外の者が取得したことがわかったとき(より厳密に言えば相続人以外の者が取得したことを証明できたとき)には,その引出しが被相続人の生前になされたもので,かつ被相続人が当該相続人以外の者に対し贈与する意思があったと認められるときには,その引き出した金員については遺留分侵害額請求(遺留分減殺請求)の問題として処理することとなります。

エ 引き出された金員について,相続人であるか相続人以外のものであるかを問わず,特定の人物が取得したことがわかったとき(より厳密に言えば特定の人物が取得したことを証明できたとき)で,それが被相続人の生前に,被相続人に無断で引き出されたものであるときは,相続人は当該取得した人物に対し不当利得返還請求または不法行為に基づく損害賠償請求が可能であり,その不当利得または不法行為の問題として処理されます。

オ 引き出された金員について,相続人であるか相続人以外のものであるかを問わず,特定の人物が取得したことがわかったとき(より厳密に言えば特定の人物が取得したことを証明できたとき)で,それが被相続人の死亡後に引き出されたものであるときも,従前は,相続人は当該取得した人物に対し不当利得返還請求または不法行為に基づく損害賠償請求が可能であり,その不当利得または不法行為の問題として処理されるます。

しかし,相続法改正により,当該取得した人物以外の共同相続人全員の同意があれば,その取得した財産が遺産分割時に遺産として存在するものとみなした上で遺産分割することができるようになりました(民法第906条の2)。
この処分された財産を遺産分割の対象とすることのできる条項については令和元年(2019年)7月1日以後に相続が開始する場合に適用されます。

もっとも,その取得した財産が遺産分割時に遺産として存在するものとみなすことについて当該取得した人物以外の共同相続人全員の同意が得られないときは,やはり不当利得返還請求または不法行為に基づく損害賠償請求により処理せざるを得ません。

(3) 葬儀費用等の費用の清算の問題

ア 葬儀費用・四十九日法要等の費用は,相続開始後に生じた債務です。
また,最終的に誰が負担すべきかについては悩ましい問題ながらも,少なくとも一次的には祭祀主宰者(喪主)が負担すべきもので,相続財産に関する費用とも言えません。

そのため,遺産分割の対象とすることについて当事者間で合意に達することができなければ,不当利得返還請求等の手続で処理すべきものとなり,遺産分割で処理することができません。

イ 香典については,死者への弔意,遺族へのなぐさめ,葬儀費用など遺族の経済的負担に軽減などを目的とする祭祀主宰者(喪主)や遺族への贈与とされており,これも遺産分割の対象となりません。

ウ なお,当事者間で葬儀に関する費用を清算する際には,葬儀費用から香典を控除し,他方で香典返しの費用を加えた金額を基準とすることが一般的です。

この返還を求めるものについても,不当利得返還請求または不法行為に基づく損害賠償請求により処理せざるを得ません。

(4) 遺産管理費用の清算の問題

ア 遺産管理費用として問題となるものには,固定資産税・都市計画税などの公租公課,遺産が賃借権であるときの賃料(地代),家屋の修理費・改築費,土地改良費,火災保険料の支払,遺産の賃借人に対する立退料などがあります。

なお,ここでいう遺産管理費用は被相続人の死亡後に発生したものを指します。
被相続人死亡前から固定資産税・都市計画税などの公租公課などを相続人の1人が負担していることも多々ありますが,その清算は特別受益の問題となります。

イ 遺産管理費用は,相続開始後に生じたもので,遺産とは別個の性質のものですので,遺産分割の対象とすることに当事者間で合意に達することができなければ,不当利得返還請求等により処理せざるを得ません。

(5) 遺産収益(相続開始後の賃料,配当金など)の分配の問題

ア 相続開始後の賃料,配当金などの遺産収益は,遺産とは別個の共同相続人間の共有財産であると扱われています(最一小判平17.9.8民集59巻7号1931頁)。

イ そのため,遺産分割の対象とすることに当事者間で合意に達することができなければ,遺産分割で処理することができず,不当利得返還請求等により処理せざるを得ません。

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