川崎パシフィック法律事務所

ウ 個人再生手続の概要

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ウ 個人再生手続の概要

ウ 個人再生手続の概要

(ア) 小規模個人再生と給与所得者個人再生

個人再生手続には,小規模個人再生と給与所得者等再生の2種類があります。
給与所得者等再生は,給与またはこれに類する定期的な収入を得る見込みがある者で,その額の変動の幅が小さいと見込まれる者(サラリーマン等)であれば利用でき,再生計画案について債権者の決議が不要(過半数の債権者が反対しても認可されます。)というメリットがあります。
しかし,給与所得者等再生の場合,法令により定められた可処分所得に基づく最低弁済額を支払わなければならず(民事再生法241条3項,民事再生法第241条第3項の額を定める政令),最低弁済額が著しく高額となるため,この申立てをするメリットがほとんどありません。
そこで,個人再生手続という場合には,小規模個人再生のみを指すものとして説明いたします。

(イ) 個人再生手続を利用できる方

以下のa.~c.の3つの条件を充たす場合に利用することができます。

a. 支払不能のおそれがあること

個人再生手続は,「支払不能のおそれ」がある場合に利用することができます(民事再生法21条1項前段)。
個人の破産手続においては「支払不能」がある場合にのみ利用することができるので(破産法15条1項),この要件に関し,個人再生手続は破産手続よりも緩やかな要件になっています。

b. 債務額が5,000万円以下の個人債務者であること

法人でない,個人債務者で,住宅ローン債権や抵当権の実行等により弁済を受けることができる額を除いた債務額が5,000万円以下である場合に利用することができます。
また,ここでいう債務額は,利息制限法所定の利率による引直計算後の金額を指しますので,引直計算後の金額が5,000万円以下であれば利用することができます。

c. 継続的にまたは反復して収入を得る見込みのある者であること

サラリーマンでなくても,小規模個人事業主等でも利用することができます。

(ウ) 弁済期間等

弁済期間は原則として3年ですが,特別の事情があるときは,5年とすることができます(民事再生法229条2項2号)。
個人債務者は,この期間,3か月に1回以上の割合で分割弁済を係属する必要があります(同項1号)。

(エ) 最低弁済基準額

個人再生手続では,以下の最低弁済基準額を上回る金額の弁済が必要となります。
① 債務額が100万円未満のとき
債務額全額
② 債務額が100万円以上500万円以下のとき
100万円
③ 債務額が500万円を超え1,500万円以下のとき
債務額の2割
④ 債務額が1,500万円を超え3,000万円以下のとき
300万円
⑤ 債務額が3,000万円を超え5,000万円以下のとき
債務額の1割

(オ) 清算価値保障原則

個人再生手続においては,「再生計画の決議が再生債権者の一般の利益に反するとき」には,再生計画案を書面による決議に付することも再生計画認可決定もすることができないことになっています(民事再生法230条2項,174条2項4号・241条2項2号)。
この「再生計画の決議が再生債権者の一般の利益に反するとき」にあたるかどうかは,再生計画による弁済額が,破産手続による配当額を上回っているかどうかで決められます。
すなわち,個人再生手続においては,債権者は,破産手続による以上の利益を保障されており,これを「清算価値保障原則」といいます。
したがって,債務者は,その所持する財産が多い場合には,前述した最低弁済額よりも多くの弁済をしなければならないことがあります。
たとえば,債務者が2,000万円の債務を抱えながら,時価が1,000万円のマンションを所有し,その住宅ローン残債権額が500万円であった場合,債務者の最低弁済額は300万円,清算価値は500万円となるので,債務者は再生計画で500万円以上を弁済しなければならないことになります。

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