(4)交通事故事件における損害賠償額算定に関する3つの基準
ア 3つの算定基準
交通事故事件において損害賠償額を算定する基準としては,大きく3つあります。
イ 自賠責保険支払基準
1つめが,(A) 自賠責保険支払基準です。
これは,自賠責保険の被害者請求を行った際に用いられる基準です。
ウ 自動車任意保険会社の基準
2つめが,自動車任意保険会社の基準です。
これは,加害者の加入している自動車任意保険会社の基準で,一応各損害保険会社ごとに定められることになっており,公表はされていません。
しかし,実際には,各損害保険会社とも,全損害保険会社で共通していた統一支払基準をほとんどそのまま使用しているようです。
そこで,以下では主に,(B) 旧任意保険統一支払基準について扱います。
この旧任意保険統一支払基準は,自賠責保険支払基準をベースに,自賠責保険を超える分について自賠責保険で認められる金額に多少上乗せして払うという程度のものといってよいでしょう。
エ 赤本基準
3つめが,(C) 赤本基準です。
これは,(公財)日弁連交通事故相談センター東京支部が毎年発行している『民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準』(赤本/赤い本)に基づく基準で,東京地方裁判所及びその近郊にある裁判所では必ず参照されるものですので,少なくとも東京近郊においては,この赤本の基準が交通事故事件訴訟の際の目安となっています。
この赤本基準は,(A) 自賠責保険支払基準や(B) 旧任意保険支払統一基準にくらべ,はるかに高額な金額を認める基準となっています。
もっとも,弁護士に依頼されないと,この基準による金額を獲得するのは困難なようです。
自賠責保険支払基準
自賠責保険支払基準とは,「自動車損害賠償責任保険の保険金等及び自動車損害賠償責任共済の共済金等の支払基準」(平成13年12月21日付金融庁,国土交通省告示第1号)により定められた基準です。
赤本
『民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準』の表紙が赤なので,「赤本(赤い本)」と呼ばれています。
(公財)日弁連交通事故相談センターが発行している『交通事故損害額算定基準-実務運用とその解説-』のほうは表紙が青なので「青本(青い本)」と呼ばれています。
この「青本」は全国的に用いられていることになっていますが,少なくとも東京地方裁判所及びその近郊にある裁判所では「赤本(赤い本)」の基準が参照されています。