川崎パシフィック法律事務所

(3)労働能力喪失期間

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(3)労働能力喪失期間

(3)労働能力喪失期間

ア  労働能力喪失期間

労働能力喪失機関については,赤本には次のように記載されています。
① 労働能力喪失期間の始期は症状固定日。
未就労者の就労の始期については原則18歳とするが,大学卒業を前提とする場合は大学卒業時とする。
② 労働能力喪失期間の終期は,原則として67歳までとする。
症状固定時から67歳までの年数が平均余命の2分の1より短くなる高齢者の労働能力喪失期間は,原則として平均余命の2分の1とする。
但し,労働能力喪失期間の終期は,職種,地位,健康状態,能力等により上記原則と異なった判断がなされる場合がある。
事案によっては期間に応じた喪失率の逓減を認めることもある。
③ むち打ち症の場合は,12級で10年程度,14級で5年程度に制限する例が多く見られるが,後遺障害の具体的症状に応じて適宜判断すべきである。

イ  労働能力喪失期間という概念が設けられる理由

後遺症(後遺障害)とは,これ以上改善しない(治らない)ものである以上,後遺症(後遺障害)が残存した場合,基本的には被害者の方が亡くなるまで一定の労働能力喪失が続くことになります。
しかし,高齢者になった場合には定年退職等で収入が減少することから,実務では,現在の収入のまま67歳まで働いたと仮定するのが合理的との判断のもとに,労働能力喪失期間の終期は原則として67歳までという扱いになっています。
もっとも,症状固定日時点で既に高齢者となっている方の場合,それでは不都合が生じるので,「症状固定時から67歳までの年数が平均余命の2分の1より短くなる高齢者の労働能力喪失期間は,原則として平均余命の2分の1とする。」という基準が併用されています。

ウ  むち打ち症の場合等の労働能力喪失期間制限

上記のとおり,赤本においては,むち打ち症の場合に労働能力喪失期間を制限する例について触れられています。
これは,比較的低い後遺症(後遺障害)等級認定を受けた場合(おおむね11級以下)には,後遺症(後遺障害)である以上,完全に治らないまでも,その状態に慣れたり一定程度症状が改善したりして,当初の5年,10年といった期間だけ労働能力喪失したと考えるべきという判断がなされるものです。
そして,このような判断が,裁判実務では広く行われています。


労働能力喪失期間の制限

比較的低い後遺症(後遺障害)等級認定を受けた場合(おおむね11級以下)には,被害者側では,労働能力喪失期間の制限を設けるべきではないと主張することが多くなっています。

他方,加害者(任意保険会社)側では,労働能力喪失期間をできるだけ制限すべきと主張することが多くなっています。
こうして,労働能力喪失期間の制限を設けるべきか否かについて,被害者側と加害者側(任意保険会社側)とで攻防が繰り広げられることが多くなっているのです。

このように,被害者側としても,労働能力喪失期間に制限を設けるべきではないという主張が単純に認められるわけではないため,労働能力喪失期間が不当に制限されることのないよう,主張・立証を丹念に行って,裁判所を説得する必要があります。

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