川崎パシフィック法律事務所

(4) ライプニッツ係数とは何か

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(4) ライプニッツ係数とは何か

(4) ライプニッツ係数とは何か

ア  賠償額一括払の原則

交通事故事件(民事訴訟を含みます。)の場合,被害者側が定期金賠償を求めてそれが認められるような例外的な場合を除き,賠償額は一括で支払われるのが原則となります。

イ  中間利息控除

(ア) このように,賠償額が一括で支払われることが原則となっていることから,次のような問題が生じます。

(イ) 後遺症による逸失利益というものは,交通事故が発生し,それにより後遺症が残存したことから,後遺症が残存したことにより働けなくなったことにより被害者に生じるであろう今後の減収分を補填するものです。
その減収は,1年後にこれくらい減収となって,2年後にもこれくらい減収となって,3年後にもまたこれくらいの減収となって,・・・・・・というものであるため,本来は,1年後に減収分の賠償を受け,2年後にもまた減収分の賠償を受け,3年後にもまた減収分の賠償を受け,・・・というように,何年,何十年にもわたって支払がなされなくてはなりません。

(ウ) ところが,後遺症による逸失利益も含めた賠償額については一括払が原則となっているため,本来1年後にもらうべき金額を今もらうとしたらいくらと評価すべきか,本来2年後にもらうべき金額を今もらうとしたらいくらと評価すべきか,本来3年後にもらうべき金額を今もらうとしたらいくらと評価すべきか,ということを考える必要が生じるのです。
たとえば,基礎収入額(年収)500万円の被害者の方が自賠法施行令別表第2第11級に該当する後遺障害を負って労働能力喪失率について20%と認められたとすると,被害者の方は,本来,症状固定日から1年後に100万円,2年後に100万円,3年後に100万円,といった形で後遺症による逸失利益分の賠償額が支払われるべきことになります。

(エ) しかし,後遺症による逸失利益分も含めた賠償額については一括払が原則となっているため,本来1年後にもらうはずの100万円を現在もらえるものとして計算するといくらになるか,本来2年後にもらうはずの100万円を現在もらえるものとして計算するといくらになるか,本来3年後にもらうはずの100万円を現在もらえるものとして計算するといくらになるか,という判断が必要になるということになります。

(オ) 高金利の時代では,郵便貯金を定期貯金として預けておくと10年でほぼ倍になったように,今,100万円もらうとするとは,利息が付くわけですから,1年後には100万円以上の金額になります。
逆に言うと,1年後にもらうべき100万円は,現在もらうとしたらもう少し低い金額になってしまうということになります。

(カ) このようなことを考え,本来1年後にもらうべき金額を今もらうとしたらいくらと評価すべきか,本来2年後にもらうべき金額を今もらうとしたらいくらと評価すべきか,本来3年後にもらうべき金額を今もらうとしたらいくらと評価すべきか,というものの計算をすることを,「中間利息控除」といいます。

ウ  中間利息控除の計算方法

そして,実務では,この中間利息控除の計算方法として,令和2年3月31日までに発生した交通事故については中間利息の控除割合を年5%,令和2年3月31日までに発生した交通事故については中間利息の控除割合を年3%とした上で,複利式のライプニッツ方式が採用されています。
令和2年4月1日より以前に交通事故が発生したと仮定して,中間利息の控除割合を年5%とした上で,複利式のライプニッツ方式により計算した場合,本来1年後にもらうべき100万円を現在もらえるものとして計算するといくらになるかは,次の計算式で求められます。
χ×1.05=1,000,000(円)
χ=95,238.095(円)

同様に,本来2年後にもらうべき100万円を現在もらえるものとして計算するといくらになるかは,次の計算式で求められます。
χ×1.05×1.05=1,000,000(円)
χ=90,702.948(円)

同様に,本来3年後にもらうべき100万円を現在もらえるものとして計算するといくらになるかは,次の計算式で求められます。
χ×1.05×1.05×1.05=1,000,000(円)
χ=86,383.760(円)

こうして,本来1年後にもらうべき1円を現在もらえるものとして計算したら0.95238095(円),本来2年後にもらうべき1円を現在もらえるものとして計算したら0.90702948(円),本来3年後にもらうべき1円を現在もらえるものとして計算したら0.86283760(円)となります。

このようにして算出された,年数1年の場合の係数0.95238095,年数2年の場合の係数0.90702948,年数3年の場合の係数0.86283760を,ライプニッツ係数(現価)といいます。

エ  ライプニッツ係数(年金現価)

そして,本来1年後にもらうべき100万円と本来2年後にもらうべき100万円とを併せて現在もらえるものとして計算すると,以下のようにして算出することができます。
1,000,000(円)×{0.95238095(年数1年の場合のライプニッツ係数(現価))+0.90702948(年数2年の場合のライプニッツ係数(現価))}
=1,000,000(円)×1.8594(小数点以下5桁目四捨五入)
=1,859,400(円)

同様に,本来1年後にもらうべき100万円,本来2年後にもらうべき100万円及び本来3年後にもらうべき100万円とを併せて現在もらえるものとして計算すると,以下のようにして算出することができます。
1,000,000(円)×{0.95238095(年数1年の場合のライプニッツ係数(現価))+0.90702948(年数2年の場合のライプニッツ係数(現価))+0.86283760(年数3年の場合のライプニッツ係数(現価))}
=1,000,000(円)×2.7232(小数点以下5桁目四捨五入)
=2,723,200(円)

こうして,
本来1年後にもらうべき1円を現在もらえるものとして計算したら0.9524(円)(小数点以下5桁目を四捨五入),
本来1年後にもらうべき1円及び本来2年後にもらうべき1円とを併せて現在もらえるものとして計算したら1.8594(円),
本来1年後にもらうべき1円,本来2年後にもらうべき1円及び本来3年後にもらうべき1円とを併せて現在もらえるものとして計算したら2.7232(円)
となります。

このようにして算出された,年数1年の場合の係数0.9524,年数2年の場合の係数1.8594,年数3年の場合の係数2.7232を,ライプニッツ係数(年金現価)といいます。

オ ライプニッツ係数(年金現価表)

(ア)令和2年4月1日以降に発生した交通事故の損害賠償に適用する表【3%】

令和2年4月1日以降に発生した交通事故の損害賠償において適用するライプニッツ係数(年金現価)について一覧にしたのが,以下に掲げる「ライプニッツ係数(年金現価表)」(令和2年4月1日以降に発生した交通事故の損害賠償に適用する表)です。
ライプニッツ係数(年金現価表)(令和2年4月1日以降に発生した交通事故の損害賠償に適用する表)【3%】

労働
能力
喪失
期間
ライプ
ニッツ
係 数
労働
能力
喪失
期間
ライプ
ニッツ
係 数
1 0.9709 44 24.2543
2 1.9135 45 24.5187
3 2.8286 46 24.7754
4 3.7171 47 25.0247
5 4.5797 48

25.2667

6 5.4172 49 25.5017
7 6.2303 50 25.7298
8 7.0197 51 25.9512
9 7.7861 52 26.1662
10 8.5302 53 26.3750
11 9.2526 54 26.5777
12 9.9540 55

26.7744

13 10.6350 56 26.9655
14 11.2961 57

27.1509

15 11.9379 58

27.3310

16

12.5611

59 27.5058
17 13.1661 60 27.6756
18 13.7535 61 27.8404
19 14.3238 62 28.0003
20 14.8775 63 28.1557
21 15.4150 64 28.3065
22

15.9369

65 28.5950
23 16.4436 66 28.5950
24 16.9355 67 28.7330
25 17.4131 68 28.8670
26 17.8768 69 28.9971
27 18.3270 70 29.1234
28

18.7641

71 29.2460
29 19.1885 72 29.3651

30

19.6004 73 29.4807
31 20.0004 74 29.5929
32 20.3888 75 29.7018
33 20.7658 76 29.8076
34 21.1318 77 29.9103
35 21.4872 78 30.0100
36

21.8323

79 30.1068

37

22.1672 80 30.2008
38 22.4925 81 30.2920
39 22.8082 82 30.3806
40 23.1148 83 30.4666
41 23.4124 84 30.5501
42 23.7014 85 30.6312
43 23.9819 86

30.7099

この表から,令和2年4月1日以降に発生した交通事故においては,労働能力喪失期間が5年の場合のライプニッツ係数(年金現価)は4.5794,労働能力喪失期間が10年の場合のライプニッツ係数(年金現価)は8.5302,労働能力喪失期間が15年の場合のライプニッツ係数(年金現価)は11.9379となることが分かります。

(イ)令和2年3月31日までに発生した交通事故の損害賠償に適用する表【5%】

令和2年3月31日までに発生した交通事故の損害賠償において適用するライプニッツ係数(年金現価)について一覧にしたのが,以下に掲げる「ライプニッツ係数(年金現価表)」(令和2年3月31日までに発生した交通事故の損害賠償に適用する表)です。
ライプニッツ係数(年金現価表)(令和2年3月31日までに発生した交通事故の損害賠償に適用する表)【5%】

労働
能力
喪失
期間
ライプ
ニッツ
係 数
労働
能力
喪失
期間
ライプ
ニッツ
係 数
1 0.9524 44 17.6628
2 1.8594 45 17.7741
3 2.7232 46 17.8801
4 3.5460 47 17.9810
5 4.3295 48 18.0772
6 5.0757 49 18.1687
7 5.7864 50 18.2559
8 6.4632 51 18.3390
9 7.1078 52 18.4181
10 7.7217 53 18.4934
11 8.3064 54 18.5651
12 8.8633 55 18.6335
13 9.3936 56 18.6985
14 9.8986 57 18.7605
15 10.3797 58 18.8195
16 10.8378 59 18.8758
17 11.2741 60 18.9293
18 11.6896 61 18.9803
19 12.08538 62 19.0288
20 12.4622 63 19.0751
21 12.8212 64 19.1191
22 13.1630 65 19.1611
23 13.4886 66 19.2010
24 13.7986 67 19.2391
25 14.0939 68 19.2753
26 14.3752 69 19.3098
27 14.6430 70 19.3427
28 14.8981 71 19.3740
29 15.1411 72 19.4038

30

15.3725 73 19.4322
31

15.5928

74 19.4592
32

15.8027

75 19.4850
33 16.0025 76 19.5095
34 16.1929 77 19.5329
35 16.3742 78 19.5551
36 16.5469 79 19.5763

37

16.7113 80 19.5965
38 16.8679 81 19.6157
39 17.0170 82 19.6340
40 17.1591 83 19.6514
41 17.2944 84 19.6680
42 17.4232 85 19.6838
43 17.5459 86 19.6989

この表から,令和2年4月1日以降に発生した交通事故においては,労働能力喪失期間が5年の場合のライプニッツ係数(年金現価)は4.5794,労働能力喪失期間が10年の場合のライプニッツ係数(年金現価)は8.5302,労働能力喪失期間が15年の場合のライプニッツ係数(年金現価)は11.9379となることが分かります。


定期金賠償

毎月ごとまたは毎年ごとといった定期ごとに一定額ずつが支払われるよな形態の賠償です。
一般的にはなかなか認められることはありませんが,悪質な死亡事案の場合や重度後遺症が残存した事案の場合等で被害者側が求めたときに認められた例ががあります。

中間利息の控除割合

最判平成17年6月14日(民集59巻5号983頁)が「損害賠償額の算定に当たり,被害者の将来の逸失利益を現在価額に換算するために控除すべき中間利息の割合は,民事法定利率によらなければならないというべきである。」と判示しています。
これにより,中間利息の控除割合については民事法定利率である年5%とすべきことが確定しました。

ライプニッツ方式

中間利息を控除する一方式で複利式のものです(単利式のものとして「ホフマン方式」があります。)。
平成11年12月22日,東京地裁,大阪地裁,名古屋地裁の各交通専門部において,地域間格差を是正し,被害者相互間の公平を図るために,特段の事情がない限り,年5%の割合によるライプニッツ方式を採用するとの共同提言を行った(「交通事故による逸失利益の算定方式についての共同提言」判時1692号162頁)ことにより,実務上,ライプニッツ方式の採用が定着しています。

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