3 相続・遺言の問題の基本的な流れ
(1) 遺産分割の場合
任意交渉段階
被相続人が遺言書を作成していない場合,遺言書を作成していてもその遺言書により遺産の帰属が決まっているのが一部にすぎない場合等には遺産分割が必要となります。
この場合,ご依頼者様のご要望に応じて遺産分割協議を申し入れ,または相手方からの遺産分割協議の申入れに対応します。
この遺産分割協議により話合いがまとまれば,遺産分割協議書を取り交わし,離婚届を提出して,事件は終了します。
なお,遺産分割協議の段階で遺産分割の前提条件について当事者間に争いがあり前提条件について合意することができなさそうなときには,遺産分割調停申立前にその前提条件について遺言無効確認請求訴訟等によりその前提条件を解決した上で,改めて遺産分割協議を進めることとなります。
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遺産分割調停段階
遺産分割協議が成立しなかった場合,ご依頼者様のご要望に応じて遺産分割調停を申し立て,または相手方からの遺産分割調停申立てに対応して,ご依頼者様の代理人として調停に出頭し証拠書類の提出等を行います。
この遺産分割調停により話合いがまとまれば,調停調書が作成され,事件は終了します。
遺産分割調停係属中に遺産分割の前提条件について当事者間に争いがあり前提条件について合意に達することができないときには,その前提条件について遺言無効確認請求訴訟等によりその前提条件を解決した上で,改めて遺産分割調停を進めることとなります。
遺産分割調停で話がまとまらない場合には,裁判所が判断する審判によって解決することになります。
調停や審判に従った預貯金の解約等を終えて事件が終了します。
(2) 遺留分侵害額請求(遺留分減殺請求)の場合
任意交渉段階
被相続人が遺言書を作成していてその遺言書による遺言によって特定の相続人らが遺産の多くを取得していたことにより,または特定の相続人らが多額の生前贈与を受けていたことにより,他の相続人の遺留分が侵害されたときには,当該他の相続人は遺留分侵害額を請求できます(令和元年(2019年)7月1日以前に相続が開始したときには遺留分減殺を請求できます)。
ご依頼者様のご要望に応じて任意交渉を申し入れ,または相手方からの申入れに応じて,ご依頼者様に代わって任意交渉を行います。
この任意交渉により話合いがまとまれば,和解書を取り交わし,事件は終了します。
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調停・訴訟段階
任意交渉では話合いがまとまらなかった場合,ご依頼者様のご要望に応じて遺留分減殺請求訴訟請求(遺留分減殺請求)調停を申し立てもしくは遺留分侵害額請求(遺留分減殺請求)訴訟を提起し,または相手方からの遺留分侵害額請求(遺留分減殺請求)調停申立てや遺留分侵害額請求(遺留分減殺請求)訴訟提起に対応して,ご依頼者様の代理人として調停や訴訟に出頭し適切な主張をし証拠書類の提出等を行います。
この遺留分侵害額請求(遺留分減殺請求)調停や訴訟の中で調停や和解が成立するか,判決が確定すれば事件は終了します。
(3) 不当利得返還請求または不法行為に基づく損害賠償請求の場合
任意交渉段階
相続人の1人が被相続人の生前や死後に同人名義預金口座から引き出した金員の返還を求める場面や葬儀費用の精算を求める場面では,不当利得返還請求または不法行為に基づく損害賠償請求を行うこととなります。
ご依頼者様のご要望に応じて任意交渉を申し入れ,または相手方からの申入れに応じて,ご依頼者様に代わって任意交渉を行います。
この任意交渉により話合いがまとまれば,和解書を取り交わし,事件は終了します。
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訴訟段階
任意交渉では話合いがまとまらなかった場合,ご依頼者様のご要望に応じて不当利得返還請求訴訟もしくは不法行為に基づく損害賠償請求訴訟を提起し,または相手方からの不当利得返還請求訴訟もしくは不法行為に基づく損害賠償請求訴訟提起に対応して,ご依頼者様の代理人として訴訟に出頭し適切な主張をし証拠書類の提出等を行います。
この不当利得返還請求または不法行為に基づく損害賠償請求の訴訟の中で和解が成立するか,判決が確定すれば事件は終了します。
(4)相続放棄申述受理申立ての場合
戸籍謄本等一式の入手等を進めた上で,相続放棄申述受理を申し立てます(相続放棄が完了するまでの間に債権者からの督促が予想される場合には,債権者に対し相続放棄申述受理申立予定であることを伝えておきます。)。
相続放棄申述受理申立後に,裁判所より相続放棄申述申立人本人に対して送付される,相続放棄の意向を確認するための書面に回答することで相続放棄が本人の意向に基づくことが確認されれば,相続放棄申述受理通知書が届きます。
相続放棄申述受理証明書を申請して入手した後,債権者に対し,同書の写しを添えて相続放棄の申述が受理された旨を伝えて事件が終了します。
(5)相続の限定承認の申述受理申立ての場合
被相続人の相続人全員を確定できるすべての戸籍謄本等一式を収集した上で,相続の限定承認の申述受理を申し立てます(相続の限定承認が完了するまでの間に債権者からの督促が予想される場合には,債権者に対し 相続の限定承認の申述受理申立予定であることを伝えておきます。)。
相続人が1名の場合には当該相続人が遺産を適切に管理しなければならず,相続人が複数の場合には相続財産管理人選任がなされて当該相続財産管理人が遺産を適切に管理しなければならないので,その管理業務を補佐します。
相続人が対価を支払って取得を希望する財産(相続人と被相続人とで共有している土地建物がある場合の被相続人の有する共有持分等)がある場合には鑑定人選任を申し立て,財産の取得に努めます。
債権者への弁済をしてなお残余財産がある場合,限定承認者が1人であれば当該限定承認者がその残余財産を取得して終了します。
限定承認者が複数の場合には,限定承認者間での遺産分割を経て,その残余財産を取得して終了します。
(6)特別縁故者に対する相続財産分与の申立ての場合
被相続人の相続人全員を確定できるすべての戸籍謄本等一式を収集した上で,相続財産管理人選任を申し立てます。
その後,必要な時期になった際に特別縁故者に対する相続財産分与を申し立て,相続財産管理人や裁判所と折衝をします。
(7)遺言執行・相続手続
遺言書により弁護士が遺言執行者に選任されている場合には,相続人に対する遺言執行者就職の連絡や財産目録の調製等を経て,預貯金口座の解約等の手続を行います。
遺言執行者を補佐して,上記各業務をサポートすることも可能です。
遺言書により遺言執行者が定められていない場合や遺言執行者が定められていても当該遺言執行者が既に死亡していたり遺言執行者への就職を拒絶したりした場合には,遺言執行者選任を申し立て,弁護士が自ら遺言執行者として上記各業務を行ったり,遺言執行者に選任された方を補佐して,上記各業務をサポートすることができます。
遺言書が存在せず,遺産分割の内容について当事者間で争いがない場合であっても,遺産分割協議書締結や預貯金解約等の業務を遂行する必要があるときには,相続人の代理人としてこれらの業務を行うこともできます。
(8)遺言書作成等の場合
遺言者の真意に基づいた遺言書となるように打ち合わせするほか,遺言公正証書を作成する場合には公証人との折衝を行った上で遺言公正証書を作成します。