1(2)不当要求行為がなされた場合の措置
ア 通知書等の発送
弁護士が依頼を受けた場合,不当要求行為者に対し,通知書等を送付することによって,不当要求行為をこれ以上継続しないよう警告することができます。
イ 仮処分命令の申立て
(ア) えせ右翼団体・えせ同和団体などによる街頭宣伝(街宣)活動に対しては,裁判所に対して街宣活動禁止の仮処分命令(民事保全法第23条2項参照)を申し立てることができます。
(イ) 反社会的勢力が不当要求を継続する意思で企業(事業者)の担当者に対して執拗に面会を求めてくるような場合には面談強要禁止の仮処分命令(同項参照)を,執拗に架電してくるような場合には架電禁止の仮処分命令(同項参照)を,それぞれ裁判所に対して申し立てることができます。
ウ 債務不存在確認請求訴訟の提起
反社会的勢力において,自身に正当な権利があると主張して譲らず,不当要求が続くような場合には,債務不存在確認請求訴訟を提起することができます。
エ 中止命令等の発出を促す
公安委員会は,指定暴力団員が指定暴力団等の威力を示して暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(以下,「暴対法」といいます。)第9条各号所定の暴力的要求行為を行った場合等には当該指定暴力団員等に対し中止命令等を発出することができるので,中止命令等を発出することができる場合には公安委員会に対してその発出を働きかけることができます。
オ 被害届の提出・刑事告訴
不当要求行為がなされた場合に当該不当要求行為が犯罪に該当する場合には,弁護士の助力のもと,被害届の提出・刑事告訴に踏み切ることができます。
カ 不当利得返還請求訴訟,損害賠償請求訴訟の提起
(ア) 暴力団員の不法行為によって損害を被った場合には,当該暴力団員に対して不当利得返還請求訴訟(民法第703条,第704条)や損害賠償請求訴訟(民法第709条)を提起することができます。
(イ) 当該暴力団員が指定暴力団の指定暴力団員であり,当該不法行為が威力利用資金獲得行為(当該指定暴力団の威力を利用して生計の維持,財産の形成若しくは事業の遂行のための資金を得,又は当該資金を得るために必要な地位を得る行為)を行うについてなされたときであれば,当該指定暴力団の代表者等に対して責任追及することで被害回復を図ることもできます(暴対法第31条の2)。
(ウ) 暴対法第31条の2の要件に該当しない場合であっても,使用者責任の規定(民法第715条)や共同不法行為の規定(同法第719条1項前段)等を活用することで,指定暴力団の代表者等や当該不法行為者たる暴力団員の所属する暴力団組織の組長やその上部団体の組長等に対して責任追及することができる場合もあります。
キ 強制執行の申立て
賠償金の支払いを命じる判決が下されてもなお支払われないような場合には,不動産執行(強制競売,強制管理/民事執行法第44条,第45条,第93条),債権執行(同法第143条)等を申し立てることにより賠償金を回収することができます。