川崎パシフィック法律事務所

ウ 過払金回収手続の概要

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ウ 過払金回収手続の概要

ウ 過払金回収手続の概要

(ア) 過払金が生じる原因

a.利息制限法の定め

利息制限法では,以下のものを超えるときは,その超過部分について,無効とされています(同法1条)。
① 元本の額が10万円未満の場合・・・・・・・年20%
② 元本の額が10万円以上100万円未満の場合・ 年18%
③ 元本の額が100万円以上の場合・・・・・・ 年15%

b.出資法上限利息の変遷

出資の受入れ,預り金及び金利等の取締りに関する法律(出資法)において,それを上回る利息を取らなければ刑事罰の対象とならない上限金利(同法5条2項)は,次のとおり変遷しています。
以下のとおり,この上限金利は,長い年月をかけて少しずつ引き下げられています。
① 昭和45年から昭和58年10月31日まで
 通常年  年率109.5%
 閏 年  年率109.8%
② 昭和58年11月1日から昭和61年10月31日まで
 通常年  年率 73%
 閏 年  年率 73.2%
③ 昭和61年11月1日から平成3年10月31日まで
 通常年  年率 54.75%
 閏 年  年率 54.9%
④ 平成3年11月1日から平成12年5月31日まで
 通常年  年率 40.004%
 閏 年  年率 40.1136%
⑤ 平成12年6月1日から平成22年6月17日まで
 通常年  年率 29.2%
 閏 年  年率 29.28%
⑥ 平成22年6月18日から
 通常年  年率 20%
 閏 年  年率 20%

c.グレーゾーン金利と引直計算,過払金の発生

消費者金融会社(サラ金)等の貸金業者は利息制限法を超え,この出資法の上限金利に近い利息を取り続けていました。
利息制限法を超過するが出資法を超えない利息のことをグレーゾーン金利といいます。
債務者の方は,本来支払う必要のない利息制限法を超える利息部分を支払ってきているので,この利息制限法を超える利息部分を元金に充当し元金の減額を図ることができます。
これを「引直計算」といいます。
たとえば,年29.2%の約定で貸金業者との間で100万円を借りている債務者の方が毎年29万円ずつ返済していると,そのままですと元金は増えていく一方です。
しかし,利息制限法に基づく利息は年15%ですので,引直計算を行うと,毎年14万円ずつ元金が減っていくことになります。
こうして,おおむね5年から7年以上,消費者金融会社(サラ金)等の貸金業者との間で借入と返済を繰り返していると,元金が0円になり,それでもさらに返済を続けることになりますので,過払金が発生しその金額がどんどん増えるということになります(なお,信販系会社の場合,消費者金融会社(サラ金)よりやや利率が低いことが多く,7年以上が過払金発生の目安になります。)。
とりわけ,出資法上限利息が高利率に設定されていた時代から借りられている方は,利息制限法所定の利率との利率の差が大きいため,過払金が高額になります。

d.「みなし弁済」規定が適用されないこと

貸金業法(旧称:貸金業の規制等に関する法律)旧43条においては,一定の要件を充たす場合には,利息制限法を超える利息を取っても有効な利息の債務の弁済とみなすという規定がありました。
これにより,消費者金融会社(サラ金)等の貸金業者は利息制限法を超える利息を取ることを正当化していたのです。
しかし,裁判例の多くはみなし弁済規定の適用を認めていない例が続いていましたし,最判平成18年1月13日〔シティズ判決/民集60巻1号1頁〕以降は,みなし弁済規定の適用が認められる余地がなくなりました。
そのため,過払金返還に際してみなし弁済規定の存在は気にする必要がなくなっています。

(イ) 過払金については,過払金発生時から年5%の利息がつくこと

a.貸金業者が「悪意の受益者」に該当する場合の利息

消費者金融会社(サラ金)等の貸金業者が「悪意の受益者」に該当する場合には,過払金発生の時から年5%の利息を払わなければなりません(民法704条前段,最判平成21年7月17日判時 2048号9頁,最判平成21年9月4日民集 63巻7号1445頁)。
こうして,過払金が発生する場合,年5%の利息がつくため,過払金はより高額になります(年5%といえども,過払金発生時から利息がつくために,その金額はばかになりません。)。
たとえば,長年,消費者金融会社(サラ金)等の貸金業者との間で借入と返済を繰り返し,その間の借入総額が500万円,その間の弁済総額が800万円となった依頼者の方の場合,その差額の300万円を大きく超える過払金が発生していることもあります。

b.貸金業者の大半は「悪意の受益者」に該当すること

最判平成19年7月13日裁判集民 225号103頁により,みなし弁済が認められない場合には,「みなし弁済の適用があるとの認識を有しており,かつ,そのような認識を有するに至ったことについてやむを得ないといえる特段の事情があるとき」でないかぎり,消費者金融会社(サラ金)等の貸金業者は「悪意の受益者」に該当することが明らかになりました。
そのため,次の(a)~(c)のいずれかに該当するような場合には,必ず消費者金融会社(サラ金)等の貸金業者は「悪意の受益者」に該当することになります(次のような場合以外でも,「悪意の受益者」に該当することがほとんどです。)。

(a) 昭和58年11月1日より以前から貸金業者との間での取引を継続している場合

「みなし弁済」の規定が定められた貸金業の規制等に関する法律は昭和58年11月1日に施行されており,それより以前は「みなし弁済」により利息制限法所定の利率を超える利息を取ることを正当化できる余地がありませんから,貸金業者は「悪意の受益者」に該当します。

(b) 銀行振込や口座引落しによる返済が1回でもなされたとき

銀行振込や口座引落しによる返済のときにも,消費者金融会社(サラ金)等の貸金業者は,貸付の契約に基づく債権の全部または一部について弁済を受けたときに,その都度,ただちに,貸金業法18条所定の記載要件を満たす書面(18条書面)を交付(郵送)しなければ,みなし弁済が認められる余地はありません。
しかし,銀行振込や口座引落しによる返済のときに18条書面が交付(郵送)されることはほとんどありませんでした。
また,仮に交付(郵送)していたとしても,消費者金融会社(サラ金)等の貸金業者が18条書面を郵送した証拠を残していることもまずありません。
そのため,銀行振込や口座引落しによる返済が1回でもなされている場合には,「みなし弁済」が成立する余地がないことから,貸金業者は「悪意の受益者」に該当します。

(c) リボルビング払いとなっている場合

リボルビング払いの場合も,消費者金融会社(サラ金)等の貸金業者は,貸付にかかる契約を締結したときに,遅滞なく,貸金業法17条所定の記載要件を満たす書面(17条書面)を交付し,かつ,貸付の契約に基づく債権の全部または一部について弁済を受けたときに,その都度,ただちに,貸金業法18条所定の記載要件を満たす書面(18条書面)を交付しなければ,みなし弁済が認められる余地はありません。
ところで,貸金業の規制等に関する法律等の一部を改正する法律の第3次施行がなされた平成19年12月19日より以前には,17条書面にも,18条書面にも,「返済回数及び返済期間」を記載しなければなりませんでした。
ところが,リボルビング払いの場合,その性質上,返済回数が何回になるか,返済期間がどのくらいになるかを記載しようがないため,リボルビング払いの場合に「返済回数及び返済期間」が記載されていることはありません。
そのため,リボルビング払いの場合には,「みなし弁済」が成立する余地がないことから,貸金業者は「悪意の受益者」に該当します。


みなし弁済規定

「みなし弁済規定」とは,以下の①~④の要件を充たすことを消費者金融会社(サラ金)等の貸金業者を立証できた場合に,利息制限法を超える利息を取っても有効な利息の債務の弁済とみなすというものです。
 その要件は以下の①~④のとおりです。

① 「貸金業者」に対する利息または損害金の支払であること
② 貸金業者が,貸付にかかる契約を締結したときに,遅滞なく,貸金業法17条所定の記載要件を満たす書面(17条書面)を交付したこと
③ 貸金業者が,貸付の契約に基づく債権の全部または一部について弁済を受けたときに,その都度,ただちに,貸金業法18条所定の記載要件を満たす書面(18条書面)を交付したこと
④ 債務者が,法定利率を超える金銭を,利息または損害金として,任意に支払ったこと
上記②及び上記③の要件については,厳格に解釈する流れがほぼ定着しており,それらの要件を充たさないとするのが裁判例の大勢でしたので,最判平成18年1月13日〔シティズ判決/民集60巻1号1頁〕以前も,ほとんどみなし弁済が認められることはありませんでした。
 そして,上記最判平成18年1月13日〔シティズ判決〕が,期限の利益喪失条項(債務の支払を怠った場合に債務者が分割弁済する利益を失い,貸金業者が一括弁済を求めることができるようになる定め)がある場合には上記④の要件を充たさないと判断し,みなし弁済が認められる余地がなくなりました。

最判平成19年7月13日

最判平成19年7月13日では,次のような記載があります。

「貸金業者が制限超過部分を利息の債務の弁済として受領したが,その受領につき貸金業法43条1項の適用が認められない場合には(注:みなし弁済が認められない場合),当該貸金業者は,同項の適用があるとの認識を有しており,かつ,そのような認識を有するに至ったことについてやむを得ないといえる特段の事情があるときでない限り,法律上の原因がないことを知りながら過払金を取得した者,すなわち民法704条の『悪意の受益者』であると推定される」。

最判平成19年7月13は,上記の記載に続けて,次のように記載されています。

「そうすると,少なくとも平成11年判決以後において,貸金業者が,事前に債務者に上記償還表を交付していれば18条書面を交付しなくても貸金業法43条1項の適用があるとの認識を有するに至ったことについてやむを得ないといえる特段の事情があるというためには,平成11年判決以後,上記認識に一致する解釈を示す裁判例が相当数あったとか,上記認識に一致する解釈を示す学説が有力であったというような合理的な根拠があって上記認識を有するに至ったことが必要であり,上記認識に一致する見解があったというだけで上記特段の事情があると解することはできない」。

リボルビング払い

「リボルビング払い」とは,消費者金融会社(サラ金)や信販会社(クレジットカード)に対する返済方法のうち,残高全体に対し毎月あらかじめ指定した一定額を返済していく方式です。
消費者金融会社(サラ金)大手や信販会社(クレジットカード)の大半がこの方式を採用しています。
リボルビング払いについては,毎月,締め日における借入残高を確定し借入残高に応じて段階的に返済定額または定率を変更する方式(スライド制)のうち,定額部分から利息を差し引いた金額を元金返済に充てる,残高スライド元利定額方式と併用される(「残高スライド元利定額リボルビング方式」と呼ばれます。)ことが多くなっています。
リボルビング払いには,以下の①及び②の問題があると言われています。

① 借入額が増えても毎月の返済額がそれほど変わらないため借金をしているという意識が薄れ,借入を増やしてしまいがちであること

② 借入額が増えると返済期間が長くなって利息の負担が激増すること

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