川崎パシフィック法律事務所

11 慰謝料

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11 慰謝料

11 慰謝料

(1) 離婚慰謝料

ア 離婚慰謝料は,婚姻している夫婦の一方が破綻原因をつくって離婚せざるを得ない状況をつくった場合,他方配偶者が慰謝料を請求するものです。

イ 離婚慰謝料の発生原因としての婚姻の破綻原因は,ほぼ不貞行為と暴力・暴言に限られています。

ウ 不貞行為の場合の離婚慰謝料額は,不貞行為以前の夫婦仲が良好だった場合には300万円程度,不貞行為以前の夫婦仲がよくなかった場合には200万円程度というのが1つの相場となっています。
不貞行為を理由として離婚慰謝料を請求する場合,当該不貞行為を行った夫または妻が素直に不貞行為を認めることはまずないことから,他方配偶者は不貞行為を証明できるだけの証拠収集が必要となります。
不貞行為の証拠としてよく提出されるものとしては,他方配偶者とその交際相手との探偵による調査報告書,E-mailやLINEのやりとり等があります。

もっとも,探偵による調査報告を経ても他方配偶者の不貞行為を証明できるだけの証拠が収集できないこともよくある上,収集できた場合でも獲得できる離婚慰謝料額を上回る調査費用がかかってしまうこともあるので,離婚慰謝料の証拠を収集するために探偵への調査を依頼することについては慎重に検討したほうがよいものと思われます。

不貞行為が婚姻関係破綻後になされたものであるときには不貞行為を理由とした慰謝料請求は発生しないこととなっていますが,不貞行為が別居してから長期間経過してからなされたケースでもない限り,当該不貞行為が婚姻関係は単語になされたものであると認められないことが多くなっています。

エ 暴力・暴言の場合の離婚慰謝料額は,ケース・バイ・ケースというほかないところです。
他方配偶者の暴力・暴言を理由として離婚慰謝料を請求する場合,当該他方配偶者が素直にそれらの行為を認めることはまずないことから,暴力・暴言を証明できるだけの証拠収集が必要となります。
暴力・暴言の証拠としてよく提出されるものとしては,写真,診断書,録音データ,E-mailやLINEのやりとり等があります。

オ 夫婦関係調整(離婚)調停や離婚訴訟の中で離婚慰謝料を請求すれば,夫婦関係調整(調停)や離婚訴訟の中で離婚慰謝料の問題についても取り上げられます。
なお,夫が離婚請求訴訟を提起しその中で財産分与を求めていないというような場合,離婚について夫婦間で和解が成立せずに離婚を認める判決が下されてしまうと,離婚請求訴訟手続においては離婚慰謝料について判断されないこととなってしまいます。

この場合,妻のほうでは,離婚自体を争いつつ,離婚を認める判決が下されることに備えて予備的反訴を提起しその中で離婚慰謝料を求めておく必要があります。

(2) 不貞行為を理由とする慰謝料

ア 夫または妻(内縁関係にある場合を含む。)が第三者と不貞行為に及んだ場合,夫婦の婚姻共同生活の平和を害したこととなるので,他方配偶者(内縁関係にある他方配偶者を含む。)が当該不貞行為に及んだ夫または妻に対しても,当該第三者に対しても不貞行為を理由とした慰謝料請求が可能です。

イ 他方配偶者においては,不貞行為に及んだ夫または妻に対し,離婚を請求するとともに離婚慰謝料を請求することも可能ですが,離婚を請求しないで不貞行為を理由とする慰謝料についてのみ請求することも可能です。
ただし,この請求をすることで,不貞行為に及んだ夫または妻からの離婚請求を誘発する可能性があるほか,夫婦間で財布が共通ですと経済的にはまったく無意味なこととなることに注意が必要です。

ウ 不貞行為に及んだ夫または妻の他方配偶者(内縁関係にある他方配偶者を含む。)による,不貞行為に及んだ第三者に対する慰謝料としては,判決の場合には150万円というのが1つの相場となっています。
もっとも,当該第三者が慰謝料を支払った場合には不貞行為に及んだ夫または妻に対しその半額相当額を求償することができることや,この請求をすることで不貞行為に及んだ夫または妻からの離婚請求を誘発する可能性があることに注意が必要です。

また,不貞行為に及んだ第三者も夫婦関係にあり(いわゆるダブル不倫),どちらの夫婦も離婚をする気がないという場合,例えばA男とB女が夫婦,C男とD女が夫婦で,B女とC男が不貞行為に及んだ場合,A男はB女とC男に対し慰謝料請求できる一方でD女もB女とC男に対し慰謝料請求できるので,夫婦としてみると損得なしということで,慰謝料請求は無意味です。

(3) 婚約・内縁関係の不当破棄を理由とする慰謝料

ア 婚約や内縁関係が不当に破棄された場合,それらを理由とする慰謝料請求が可能です。
離婚慰謝料を請求する場合と異なり,その原因が不貞行為と暴力・暴言に限られるということもありません。

イ とりわけ婚約・内縁関係が不当に破棄されたために中絶を余儀なくされたケースなどでは,その慰謝料額は離婚慰謝料額よりも高額となることが多くなっています。
また,慰謝料請求のみならず,中絶費用や中絶に伴い休職を余儀なくされたことを理由とする損害等を請求することが可能な場合もあります。

ウ もっとも,婚約・内縁関係の不当破棄を理由とする損害賠償(慰謝料)請求の場合,そもそも当事者間で婚約または内縁関係が成立していたことが必
であり,将来の婚姻の合意,結婚式場の手配,両親との顔合わせといった婚約や内縁関係の成立を基礎づける間接事実の主張立証が欠かせません。
また,婚約・内縁関係が不当に破棄されたという相手方当事者に責任があることを基礎づける間接事実の主張立証も欠かせません。

(4) 中絶を余儀なくされたことを理由とする慰謝料請求

ア 強制性交など意に沿わない性交渉の結果として女性が妊娠し中絶を余儀なくされた場合,その行為をした男性に対し慰謝料請求をできることは当然です。

イ 他方,合意に基づき性交渉の結果として女性が意に沿わない妊娠をし中絶せざるを得なくなった場合,従前は,婚約や内縁関係が不当に破棄されたことにより中絶せざるを得なくなった場合でもなければ慰謝料請求ができないものと考えることが一般的でした。
しかし,近時では,女性のみが中絶によって負担や不利益を被ることから,その精神的損害の半額相当額について男性も負担を負うべきと考えられるようになっています。
裁判例からすれば,中絶を余儀なくされた女性は,その行為をした男性に対し,少なくとも50万円の慰謝料の支払を求めることができるものと思われます。

ウ また,慰謝料のほかに,中絶を余儀なくされたことによる中絶費用や中絶に伴い休職を余儀なくされたことを理由とする損害等についての半額相当額についても支払を求めることができるものと思われます。

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