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5 雇用契約上の地位確認請求

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5 雇用契約上の地位確認請求

5 雇用契約上の地位確認請求

(1) 雇用契約上の地位確認請求とは

ア 雇用契約上の地位確認請求とは,解雇などにより労働者としての地位を失った者が解雇の効力などを争って,雇用契約上の地位(労働者の地位)にあることの確認を求める請求です。

イ 訴訟により雇用契約上の地位確認を請求する場合には,「請求の趣旨」欄に「原告が,被告に対し,雇用契約上の権利を有する地位にあることを確認する。」旨記載することになります。

ウ 雇用契約上の地位確認請求においては,その地位が確認されれば,解雇などの処分以後も賃金を支払ってもらえる地位を回復することとなりますので,地位確認を求めるとともに,併せて解雇などにより労働者としての地位を失って以降の賃金等の支払を求めることができます。

エ 解雇などにより労働者としての地位を失った場合,当該労働者が使用者に対し解決金の支払を求めることはできないので,雇用契約上の地位確認請求による必要があります。

もっとも,使用者としても労働者の復職を望んでいないこと,当該労働者としてもいまさらその使用者に引き続き雇用してもらうことを望んでいないことが多いところです。
そのため,雇用契約上の地位確認請求においては,任意交渉,労働審判,訴訟のいずれかの段階を問わず,使用者と労働者が解雇などにより労働者としての地位を失った日付時などで合意退職したことを合意するとともに使用者が労働者に対し解決金を支払うという形で終了することが大半です。

(2) 雇用契約上の地位確認請求の対象となる雇用契約の終了事由

ア 雇用契約の終了事由の種類

雇用契約が終了していなければ,雇用契約上の地位確認請求の対象となりません。
そして,雇用契約上の地位確認請求の対象となる雇用契約の終了事由としては,大きく分けて,以下の(ア)及び(イ)があります。
(ア) 解雇
(イ) 解雇以外の終了事由

イ 解雇の種類

雇用契約上の地位確認請求の対象となる雇用契約の終了事由のうちの解雇の種類には,以下の(ア)及び(イ)があります。
(ア) 懲戒解雇
(イ) 普通解雇

ウ 解雇以外の終了事由

雇用契約上の地位確認請求の対象となる雇用契約の終了事由のうちの解雇以外のものには,以下の(ア)~(ウ)があります。
(ア) 有期雇用契約の期間満了
(イ) 休職期間経過後の自動退職
(ウ) 定年退職

(3) 懲戒解雇

ア 懲戒解雇の位置付け

懲戒解雇は,企業秩序の違反に対し,使用者によって課せられる一種の制裁罰として,使用者が有する懲戒権の発動により行われるものです。
他方,普通解雇は,民法第627条第1項に基づく解雇です。

イ 懲戒解雇の無効原因

懲戒解雇の無効原因には,以下の(ア)~(ウ)があります。
(ア) 強行法規規定違反
(イ) 就業規則に懲戒事由の定めがないこと等
(ウ) 解雇権の濫用

ウ 前記イ(ア)の「強行法規規定違反」

以下の(ア)~(コ)の強行法規規定に違反してなされた解雇は無効です。
(ア) 国籍,信条又は社会的身分による差別的取扱いの禁止(労働基準法第3条)
(イ) 公民権行使を理由とする解雇の禁止(労働基準法第7条)
(ウ) 業務上の負傷・疾病の休業期間等,産前産後休業期間等の解雇制限(労働基準法第19条)
(エ) 性別を理由とする差別的取扱いの禁止(雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(男女雇用機会均等法)第6条第4号)
(オ) 婚姻,妊娠,出産,産前産後休業を理由する不利益取扱いの禁止((雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(男女雇用機会均等法)第9条)
(カ) 育児休業,介護休業,子の看護休暇,所定外労働の制限,時間外労働の制限,深夜業の制限,所定労働時間の短縮措置の申出等を理由とする不利益取扱いの禁止(育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(育児介護休業法)第10条,第16条,第16条の4,第16条の9,第18条の2,第20条の2,第23条の2)
(キ) 通常の労働者と同視すべき短時間労働者に対する差別的取扱いの禁止(短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律(パートタイム労働法)第8条)
(ク) 都道府県労働局長に対し個別労働関係紛争解決の援助を求めたこと,あっせんを申請したことを理由とする不利益取扱いの禁止(個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律(個別労働関係紛争解決促進法)第4条,第5条)
(ケ) 公益通報したことを理由とする解雇の無効(公益通報者保護法第3条)
(コ) 不当労働行為の禁止(労働組合法第7条)

エ 前記イ(イ)の「就業規則に懲戒事由の定めがないこと等」

(ア) 労働者は,使用者と雇用契約を締結したことによって当然に企業秩序遵守義務を負います。
しかし,企業秩序遵守義務違反に対する懲戒権は,あらかじめ就業規則に懲戒の種別及び事由並びに手段を明示してはじめて行使できます(国鉄札幌運転区事件・最三小判昭54.10.30民集33巻6号647頁,JR東日本高崎西部分会事件・最一小判平8.3.28裁判集民178号1113頁,フジ興産事件・最二小判平15.10.10裁判集民211号1頁参照)。

そのため,就業規則が制定されていない場合や,就業規則が制定されていたとしてもその就業規則には懲戒の種別及び事由並びに手段が明示されていないときには,そもそも懲戒解雇が有効になることはありません。

(イ) 就業規則が法的規範として拘束力を有するようになるには,その内容について,就業規則の適用を受ける事業場の労働者に周知させる手続がとられていなければなりません(前掲最二小判昭15.10.10参照)。

(ウ) 懲戒当時使用者が認識していなかった非違行為は,特段の事情がない限り,当該懲戒の理由とされたものではないことが明らかですので,その存在をもって当該懲戒の有効性を基礎づけることはできません(山口観光事件・最一小判平8.9.26裁判集民180号473頁参照)。
そのため,懲戒事由は,懲戒当時使用者が認識しているものに限られます。

オ 前記イ(ウ)の「解雇権の濫用」

(ア) 使用者の懲戒権の行使は,当該具体的事情の下において,それが客観的に合理的理由を欠き社会通念上相当として是認することができない場合には権利の濫用として無効になります(ダイハツ工業事件・最二小判昭58.9.16裁判集民139号503頁参照)。

(イ) そのため,労働者は,懲戒解雇事由が就業規則に定めのあるものに該当する場合であっても,解雇権濫用の評価根拠事実を主張して,懲戒解雇の有効性を争うことができます。
他方で,使用者は,解雇権濫用の評価障害事実を主張して,懲戒解雇が有効であることを示していくきます。

(4) 普通解雇

ア 普通解雇の位置付け

普通解雇は,私法上の形成権の行使である解約の申入れと理解されています。

イ 普通解雇の無効原因

普通解雇の無効原因には,以下の(ア)及び(イ)があります。
(ア) 強行法規規定違反
(イ) 解雇権の濫用

ウ 前記イ(ア)の「強行法規違反」

強行法規違反に関しては,普通解雇の場合も懲戒解雇の場合と同様です(前記(3)ウ参照)。

エ 前記イ(イ)の「解雇権の濫用」

(ア) 労働契約法第16条は,「解雇は,客観的に合理的な理由を欠き,社会通念上相当であると認められない場合は,その権利を濫用したものとして,無効とする。」と規定しています。
この規定の内容を,解雇権濫用法理といいます。

(イ) 普通解雇については,私法上の形成権の行使である解約の申入れと理解されています。
そして,民法上は,期限の定めのない雇用契約については,いつでも解約の申入れをすることができることとなっています(民法第627条第1項本文)。
しかし,従来より,判例法上,現在の労働契約法第16条の規定と同内容の解雇権濫用法理が確立されていました(日本食塩製造事件・最二小判昭50.4.25民集29巻4号456頁,高知放送事件・最二小判昭52.1.31裁判集民120号23頁参照)。
労働基準法の平成15年改正(同年1月1日施行)により,労働基準法第18条の2が規定されて解雇権濫用法理が明文化され,その後,平成20年3月1日に施行された労働契約法第16条に規定されました(それと併せて,解雇権濫用法理を規定していた労働基準法第18条の2が削除されています。)。

(ウ) 解雇権濫用法理により,労働者は,解雇権濫用の評価根拠事実を主張して,普通解雇の有効性を争うことができます。
他方で,使用者は,解雇権濫用の評価障害事実を主張して,普通解雇が有効であることを示していくきます。

オ 解雇権濫用の有無を判断する具体的事情

(ア) 解雇権濫用の有無を判断する具体的事情の例
解雇権濫用の有無を判断する具体的事情として,使用者側がよく掲げるものとしては,以下のa.~c.があります。
a. 整理解雇
b. 勤務成績,勤務態度などが不良で職務を行う能力や適格性を欠いている場合
c. 規律違反行為

(イ) 前記(ア)a.の「整理解雇」が掲げられる場合
a. 整理解雇とは,一般に,使用者が経営不振などのために従業員数を縮減する必要に迫られたという理由により一定数の労働者を余剰人員として解雇する場合をいいます。

b. 整理解雇が解雇権濫用にあたるかどうかを判断する具体的事情は,以下の(a)~(d)の4つの要素を総合考慮して判断することとなっています。
(a) 人員削減の必要性
(b) 解雇回避努力
(c) 人選の合理性
(d) 手続の相当性

c. 近時の裁判例では,前記b.(a)~(d)の4要素すべてを完全に充たさなければならないとまではされていないものの,それでも依然として,この4要素をほぼすべて充たさないと整理解雇が解雇権濫用と判断されていることに変わりはありません。

(ウ) 前記(ア)b.の「勤務成績,勤務態度などが不良で職務を行う能力や適格性を欠いている場合」が掲げられる場合
「勤務成績,勤務態度などが不良で職務を行う能力や適格性を欠いている場合」が解雇権濫用にあたるかどうかについては,以下のa.~h.を総合検討するものとされています(山口幸雄・三代川三千代・難波孝一編『労働事件審理ノート』(2005,判例タイムズ社)14頁)。
a. 当該企業の種類,規模
b. 職務内容
c. 労働者の採用理由(職務に要求される能力,職務態度がどの程度か)
d. 勤務成績,勤務態度の不良の程度(企業の業務遂行に支障を生じ,解雇しなければならないほどに高いかどうか)
e. その回数(1回の過誤か,繰り返すものか)
f. 改善の余地があるか
g. 使用者側からの指導があったか(注意・警告をしたり,反省の機会を与えたか)
h. 他の労働者との取扱いに不均衡はないか

(エ) 前記(ア)c.の「規律違反行為」が掲げられる場合
「規律違反行為」が解雇権濫用にあたるかどうかについては,以下のa.~d.を総合検討するものとされています(前掲『労働事件審理ノート』14頁)。
a. 規律違反行為の態様(業務命令違反,職務専念義務違反,信用保持義務違反など)
b. 規律違反行為の程度
c. 規律違反行為の回数
d. 改善の余地の有無

(5) 有期雇用契約期間の満了

ア 有期雇用契約期間の満了とは

期間の定めのある雇用契約のことを,有期雇用契約といいます。
期間が満了すると,更新などがなされない限り,有期雇用契約は終了します。

イ 有期雇用契約期間の満了の場面における解雇権濫用法理の類推

(ア) 有期雇用契約(期間の定めるのある雇用契約)であっても,臨時従業員の短期雇用契約が反復更新されて期間の定めのない契約と実質的に異ならない状態となった場合には,雇止めの効力を判断するにあたっては,解雇権濫用法理が類推されます(東芝柳町事件・最一小判昭49.7.22民集28巻5号927頁参照)。
この場合,更新拒否が正当化されるには,解雇の場合と同様に客観的で合理的な理由が必要となります。

(イ) 有期雇用契約を期間の定めのない雇用契約と実質的に同視することまではできない場合であっても,雇用継続に対する労働者の期待利益に合理性があるときには,解雇権濫用法理が類推されます(日立メディコ事件・最一小判昭61.12.4裁判集民149号209頁)。

ウ 解雇権濫用法理類推の判断要素

解雇権濫用法理類推の判断要素としては,以下の(ア)~(オ)が考慮されます(山口幸雄・三代川三千代・難波孝一編『労働事件審理ノート』(2005,判例タイムズ社)38頁)。
(ア) 当該雇用の臨時性・常用性
(イ) 更新の回数
(ウ) 雇用の通算期間
(エ) 契約期間管理の状況
(オ) 雇用継続の期待を持たせる言動・制度の有無

(6) 休職期間経過後の自動退職

ア 休職期間経過後の自動退職とは

休職期間経過後の自動退職とは,休職期間経過後も休職事由が消滅していない場合に,労働者が自動退職となる扱いをいいます。
この自動退職が適法となるためには,就業規則において休職期間経過後の自動退職の規定が設けられている必要があります。

イ 休職の種類

休職期間経過後の自動退職が問題となりやすい休職の種類としては,以下の(ア)及び(イ)があります。
(ア) 傷病休職(病気休職)
業務外の傷病による長期欠勤が一定期間に及んだ場合に行われる休職です。

(イ) 事故欠勤休職
傷病以外の自己都合による欠勤(事故欠勤)が一定期間に及んだ場合に行われる休職です。

ウ 休職期間経過後の自動退職の適法性

(ア) 従前の職務を通常の程度に行える健康状態に回復したことを「治癒」といい(平仙レース懲戒解雇事件・浦和地判昭40.12.16労民16巻6号1113頁参照),この状態に達しているにもかかわらず,復職を拒否して休職 期間経過後の自動退職扱いとした場合には違法になります。

(イ) また,「治癒」の状態に達しない場合でも,ただちに休職期間経過後の自動退職扱いとすることが適法とされるものではなく,以下のa.~c.の基準などに照らして,適法性が判断されることとなります。

a. 当初軽作業に就かせれば通常業務に復帰できる場合には,使用者には,そのような配慮を行うことが義務付けられることがあること(エール・フランス事件・東京地判昭59.1.27判時1106号147頁,全日本空輸退職強要事件・大阪地判平11.10.18労判722号9頁参照)

b. 労働者が職種や業務内容を特定せずに労働契約を締結した場合においては,現に就業を命じられた特定の業務について労務の提供が十全にはできないとしても,その能力,経験,地位,当該企業の規模,業種,当該 企業における労働者の配置・異動の実情及び難易などに照らして当該労働者が配置される現実的可能性があると認められる他の業務について労務の提供をすることができ,かつ,その提供を申し出ているならば,なお債務の本旨に従った履行の提供があると扱われること(片山組事件・最一小判平10.4.9裁判集民188号1頁参照)

c. 休職後の復帰に際して,現実に配置可能な業務の有無を検討すべきこと(JR当会退職強要事件・大阪地判平11.10.4労判771号25頁参照)

(7) 定年退職

ア 定年退職とは

労働者が一定の年齢に達した時に雇用契約が終了する制度を,定年制といいます。
その定年制に基づいて定年に達したときに当然に雇用契約が終了するものを,定年退職といいます。

イ 定年退職についての法的規制

従業員の定年を定める場合は,その定年年齢は満60歳以上とする必要があります(高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(高年齢者雇用安定法)第8条)。

また,定年年齢を満65歳未満に定めている事業主は,その雇用する高年齢者の満65歳までの安定した雇用を確保するため,「満65歳までの定年の引上げ」,「満65歳までの継続雇用制度の導入」,「定年の廃止」のいずれかの措置(高年齢者雇用確保措置)を実施する必要があります(高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(高年齢者雇用安定法)第9条)。

ウ 定年退職の適法性

(ア) 定年を満60歳未満に設定した場合にその設定した年齢に達したとして退職扱いとしたときには,高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(高年齢者雇用安定法)第8条により違法となります。
使用者が定年を廃止した場合において定年に達したとして退職扱いとしたときまたは満65歳まで定年を引き上げた場合に満65歳未満で退職扱いとしたときには,同法第9条により違法となります。

(イ) 就業規則上に設けていた定年年齢に基づき当該年齢に達したとして退職扱いをしたとしても,それと異なる取扱いが事実たる慣習となっていた場合(例えば,本人が退職を希望しない限り満70歳で定年退職となる取扱いが事実たる慣習となっていた場合)には,その慣習が雇用契約の内容を構成しているとして違法となります(日本大学定年事件・東京地決平13.7.25労判818号46頁参照)。

(8) 雇用契約上の地位確認請求に付随する賃金(賞与を含む。)の支払請求

ア 雇用契約上の地位確認請求に付随する賃金(賞与を含む。)の支払請求とは

(ア) 解雇などにより労働者としての地位を失った場合,雇用契約上の地位確認請求によりその地位が回復されれば,解雇などにより労働者としての地位を失った日以後の賃金を請求できます。
理屈としては,解雇などによって就労を拒否されていた期間については,債権者である使用者の責に帰すべき事由による就労債務の履行不能であり,民法第536条第2項本文により賃金請求権を失わないからであると考えられています。

(イ) 解雇期間中の賃金として請求できる金額は,当該労働者が解雇されなかったならば雇用契約上確実に支給されたであろう賃金の合計額となります。
この賃金は,原則として解雇などにより労働者としての地位を失った当時の基本給などを基礎に算定されますが,この賃金に各種手当や賞与・一時金が含まれるかどうか,この賃金から,解雇などにより労働者としての地位を失っている間に他所で就労して得たことによる収入(解雇などの期間中の中間収入)を差し引く(控除する)かという問題についての取扱いは以下のイ~エのとおりです。

イ 各種手当

(ア) 通勤手当
実質補償的な性質を有するものであれば,雇用契約上の地位確認請求に付随して請求できる賃金には含まれません。

(イ) 時間外手当
時間外勤務を命じられて現実に所定時間就労をした場合に発生するものですので,雇用契約上の地位確認請求に付随して請求できる賃金には含まれません。

ウ 賞与・一時金

(ア) 賞与・一時金については,一般的には,就業規則上,人事考課または成績査定によってはじめて具体的権利として生ずるものと理解されています。
そのため,賞与・一時金については,一般的に,労使交渉または使用者の決定により算定基準・方法が定められているほか,これに従った査定がされていることまで主張立証できてはじめて,雇用契約上の地位確認請求に付随して請求できる賃金には含まれないと考えられています。

(イ) もっとも,以下のa.~c.に該当する場合に,賞与・一時金が,雇用契約上の地位確認請求に付随して請求できる賃金に含めた例がみられます。
a. 一般従業員の査定配分額をもって賃金に含めた例(富士輸送機工業事件・大阪地判昭47.3.17判時675号88頁)
b. 最低査定額をもって賃金に含めた例(吉田鉄工所事件・大阪地判昭49.3.6判時745号97頁)
c. 査定が形式的なものであるとか,定額・定率の支払実績があることを持って賃金に含めた例(いずみの会事件・東京高判昭60.2.26判時1149号161頁,高宮学園事件・東京地判平7.6.19判時1540号130頁)

エ 解雇などの期間中の中間収入の控除

解雇などにより労働者としての地位を失っている間に他所で就労して得たことによる収入(解雇などの期間中の中間収入)がある場合には,その収入があったのと同時期の解雇などの期間中の賃金のうち,同時期の平均賃金の6割(労働基準法第26条参照)を超える部分についてのみ控除の対象となります(米軍山田部隊事件・最二小判昭37.7.20民集16巻8号1656頁,あけぼのタクシー事件・最一小判昭62.4.2裁判集民150号527頁参照)。


請求の趣旨

訴訟を提起するには訴状を提出する必要があります。
また,その訴状において,原告がいかなる請求についてどのような判決を求めるのかを簡潔に記載する必要があり,その記載した部分を,「請求の趣旨」といいます。

強行法規規定

「強行法規規定(強行法規,強行規定)」とは,法令の規定のうちで,その規定に反する当事者間の合意の有無を問わずに適用される規定をいいます。
この規定に違反した契約などは無効となります。

評価根拠事実

解雇権の行使が濫用されたかどうかといった抽象的な要件を規範的要件といいます。
このような規範的要件そのものが主張立証の対象とはならず,主張立証の対象となるのは,このような規範的要件を基礎づける具体的な事実や規範的要件を否定する具体的な事実となります。
このうち,規範的要件を基礎づける具体的な事実を「評価根拠事実」といいます。

評価障害事実

「評価障害事実」とは,規範的要件を否定する具体的な事実をいいます。
解雇権が濫用されたかどうかといった規範的要件の場合,評価根拠事実と並んで,評価障害事実も,当事者の主張立証の対象となります。

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