3 暴力団の基礎知識 (3)特定抗争指定暴力団等(4)特定危険指定暴力団等 (5)暴力団共通の性格
(3) 特定抗争指定暴力団等
ア 特定抗争指定暴力団等の要件
特定抗争指定暴力団等の要件は,以下の2つです(暴対法第15条の2第1項)。
(ア) 指定暴力団等の相互間に対立が生じ,対立抗争が発生した場合において,当該対立抗争に係る凶器を使用した暴力行為が人の生命又は身体に重大な危害を加える方法によるものであること
(イ) 当該対立抗争に係る暴力行為により更に人の生命又は身体に重大な危害が加えられるおそれがあること
イ 特定抗争指定暴力団等として指定されている団体
道仁会と浪川会(指定当時の名称:九州誠道会)が特定抗争指定暴力団等として指定されていました(同指定はいずれも後に解除されています。)
現在,六代目山口組と神戸山口組が特定抗争指定暴力団等として指定されています。
(4) 特定危険指定暴力団等
ア 特定危険指定暴力団等の要件
特定危険指定暴力団等の要件は,以下の2つです(暴対法第30条の8第1項)。
(ア) 暴力的要求行為若しくは要求等に係る準暴力的要求行為で相手方に拒絶されたもの又は損害賠償請求等の妨害行為が行われた場合において,指定暴力団員又はその要求若しくは依頼を受けた者が当該行為に関連して凶器を使用して人の生命又は身体に重大な危害を加える方法による暴力行為を行ったこと
(イ) 当該指定暴力団員の所属する指定暴力団等の指定暴力団員又はその要求若しくは依頼を受けた者が更に反復して同様の暴力行為を行うおそれがあること
イ 特定危険指定暴力団等として指定されている団体
現在,五代目工藤會が特定危険指定暴力団等として指定されています。
(5) 暴力団共通の性格
暴力団共通の性格については,以下に引用する横浜弁護士会民事介入暴力対策委員会/総合法律相談センター『民事介入暴力対策マニュアル-誰にでも解決できる民暴事件-改訂版』2頁記載のとおりです。
暴力団の共通した性格は,その団体の威力を利用して暴力団員に資金獲得活動を行わせて利益の獲得を追求するところにある。
暴力団は,暴力的な性格を有する者や暴力事犯の前科前歴を有する者を,多数構成員としている。そして,暴力団員は,その所属する団体の威力を利用して,市民生活や経済取引等に介入し,合法的な経済活動に止まらず,違法又は不当な資金獲得活動を行っている。
下部組織の構成員が上部組織の威力を用いてより効率的に資金獲得活動を行うための対価として,金銭(上納金)が納められる。また,縄張が広がれば,それだけ暴力団の獲得する資金も増大するため,暴力団は常に縄張の維持・拡大に努めることになる。縄張や組織の拡大に努める結果,暴力団同士の軋轢・摩擦が生じ,対立抗争に発展することもある。
組織の運営方針,上層部の人事や他団体との問題処理については,執行部等の上部機関が決定し,検討の結果を最上位の組長が最終的に決定する形で運営されている。
暴力団は,その構成員に対して,命令服従,抗争への参加,事務所当番,上納金の支払い等の義務を課し,これらの義務に違反した者に対しては制裁を科す一方,上位者の命令に従い組織に貢献した者に対しては組織内のより高い地位や報酬を与えることにより,組織の内部秩序を保っている。