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10 精神科病院からの退院請求・処遇改善請求

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10 精神科病院からの退院請求・処遇改善請求

10 精神科病院からの退院請求・処遇改善請求

(1)退院請求・処遇改善請求とは

ア 退院請求とは

退院請求とは,精神科入院中の患者またはその保護者が,入院を不服として,都道府県知事に対して,精神科病院の管理者に,その患者を退院させるように命じるよう請求する制度をいいます。

イ 処遇改善請求とは

処遇改善請求とは,精神病院入院中の患者またはその保護者が,入院中の処遇を不服として,都道府県知事に対して,精神科病院の管理者に,その患者の処遇を改善させるように命じるよう請求する制度をいいます。

(2)入院形態

ア 入院形態ごとの要件把握などの必要性

退院請求に際しては,入院形態ごとに要件などが異なることから,その要件などを踏まえた記載が求められます。
そのため,入院形態ごとの要件などを把握しておく必要があります。

イ 入院形態

入院形態には,以下の(ア)~(オ)があります。
(ア)任意入院(精神保健及び精神障害者福祉に関する法律第20条)
(イ)医療保護入院(同法第33条)
(ウ)応急入院(同法第33条の7)
(エ)措置入院(同法第29条)
(オ)緊急措置入院(同法第29条の2)

ウ 前記イ(ア)の「任意入院」(精神保健及び精神障害者福祉に関する法律第20条)

(ア)実体的要件
任意入院の実体的要件は,以下のa.~c.です。
a. 精神障害者(統合失調症,精神作用物質による急性中毒またはその依存症,知的障害,精神病質その他の精神疾患を有する者(以下同じ。)/同法第5条)であること(同法第20条)
b. 医学的適応性があること
c. 精神障害者の同意(同条)

(イ)手続的要件
任意入院の手続的要件は,以下のa.~c.です。
a. 精神障害者からの任意入院同意書の受領(同法第21条第1項)
b. 精神障害者に対する書面による権利告知(同項)
c. 閉鎖病棟による処遇を行う場合における,精神障害者に対する書面による通知

(ウ)退院の自由と入院の時間制限
精神科病院の管理者は,自ら入院した精神障害者(任意入院者)から退院の申出があった場合においては,原則として,その者を退院させなければなりません(同条第2項)。
しかし,精神科病院の管理者は,指定医による診察の結果,当該任意入院者の医療及び保護のため入院を継続する必要があると認めたときは,72時間までは,その者を退院させないことができます(ただし,特定医師の診察の場合には12時間/同条第3項・第4項)。

エ 前記イ(イ)の「医療保護入院」(精神保健及び精神障害者福祉に関する法律第33条)

(ア)実体的要件
a. 医療保護入院の実体的要件は,同条第1項第1号の場合(同条第4項の場合を含む。)と同条第1項第2号の場合とで異なります。
b. 同条第1項第1号の場合(同条第4項の場合を含む。)
同条第1項第1号の場合(同条第4項の場合を含む。)の実体的要件は,以下の(a)~(e)です。
(a)精神障害者であること(同号)
(b)医療及び保護のため入院の必要がある者であること(同号)
(c)任意入院(同法第20条)が行われる状態にないこと(同法第33条第1項第1号)
(d)指定医による診察(同号)または緊急その他やむを得ない理由があるときの特定医師による診察(同条第4項)
(e)家族等のうちいずれかの同意があること(同条第1項第1号)またはそれに代わる,その者の居住地(居住地がないか,または明らかでないときは,その者の現在地。)を管轄する市町村長(特別区の長を含む。)の同意があること(同条第3項)

ⅰ. なお,「家族等」とは,以下の(ⅰ)~(ⅴ)に該当するものを除く,当該精神障害者の配偶者,親権を行う者,扶養義務者及び後見人または保佐人をいいます(以下同じ。/同条第2項)。
(ⅰ)行方の知れない者
(ⅱ)当該精神障害者に対して訴訟をしている者またはした者並びにその配偶者及び直系血族
(ⅲ)家庭裁判所で免ぜられた法定代理人,保佐人または補助人
(ⅳ)心身の故障により前項の規定による同意または不同意の意思表示を適切に行うことができない者として厚生労働省令で定めるもの
(ⅴ)未成年者

ⅱ. また,市町村長(特別区の長を含む。)の同意で足りるのは,その家族等がない場合またはその家族等の全員がその意思を表示することができない場合に限られます(同条第3項)。

c. 同条第1項第2号の場合

同条第1項第2号の場合の実体的要件は,以下の(a)~(e)の要件を充たすものとして医療保護入院をさせるため精神科病院に移送されたことです。
(a)精神障害者であること(同法第34条第1項)
(b)直ちに入院させなければその者の医療及び保護を図る上で著しく支障がある者であること(同項)
(c)任意入院(同法第20条)が行われる状態にないこと(同法第34条第1項)
(d)指定医による診察(同項)
(e)家族等のうちいずれかの同意があること(同項)またはそれに代わる,その者の居住地(居住地がないか,または明らかでないときは,その者の現在地。)を管轄する市町村長(特別区の長を含む。)の同意があること(同条第2項)

市町村長(特別区の長を含む。)の同意で足りるのは,その家族等がない場合またはその家族等の全員がその意思を表示することができない場合に限られることについては,前記b.(e)の場合と同様です。

(イ)手続的要件
医療保護入院の手続的要件は,精神障害者に対する書面による権利告知です(同法第33条の3第1項本文)。
 ただし,当該入院措置を採った日から4週間を経過する日までの間であって,当該精神障害者の症状に照らし,その者の医療及び保護を図る上で支障があると認められる間においては,権利告知が不要となります(同項ただし書)。

(ウ)入院の時間制限
前記(ア)b.の同条第1項第1号の場合(同条第4項の場合を含む。)において緊急その他やむを得ない理由があるときに特定医師による診察がなされたことにより医療保護入院の措置が採られたときには,入院させることができる時間は12時間です(同法第33条第4項)。
それ以外の場合には,入院の時間制限はありません。

オ 前記イ(ウ)の「応急入院」(精神保健及び精神障害者福祉に関する法律第33条の7)

(ア)実体的要件
a. 応急入院の実体的要件は,同条第1項第1号の場合(同条第2項の場合を含む。)と同条第1項第2号の場合とで異なります。
b. 同条第1項第1号の場合(同条第2項の場合を含む。)
同条第1項第1号の場合(同条第2項の場合を含む。)の実体的要件は,以下の(a)~(f)です。
(a)医療及び保護の依頼があった者であること(同項柱書)
(b)急速を要し,その家族等の同意を得ることができない場合であること(同項柱書)
(c)精神障害者であること(同項第1号)
(d)直ちに入院させなければその者の医療及び保護を図る上で著しく支障がある者であること(同号)
(e)任意入院(同法第20条)が行われる状態にないこと(同法第33条の7第1項第1号)
(f)指定医による診察(同号)または緊急その他やむを得ない理由があるときの特定医師による診察(同条第2項)
c. 同条第1項第2号の場合
同条第1項第2号の場合の実体的要件は,以下の(a)~(f)の要件を充たすものとして応急入院をさせるため精神科病院に移送されたことです。
(a)医療及び保護の依頼があった者であること(同項柱書)
(b)急速を要し,その家族等の同意を得ることができない場合であること(同項柱書)
(c)精神障害者であること(同法第34条第3項)
(d)直ちに入院させなければその者の医療及び保護を図るうえで著しく支障がある者であること(同項)
(e)任意入院(同法第20条)が行われる状態にないこと(同法第34条第3項)
(f)指定医による診察(同項)

(イ)手続的要件
応急入院の手続的要件は,精神障害者に対する書面による権利告知です(同法第33条の8,第33条の7第1項・第2項,第29条第3項)。

(ウ)入院の時間制限
前記(ア)b.の同法第33条の7第1項第1号(同条第2項の場合を含む。)の場合において緊急その他やむを得ない理由があるときに特定医師による診察がなされたことにより医療保護入院の措置が採られたときには,入院させることができる時間は12時間です(同項)。
それ以外の場合には,入院させることができる時間は72時間です(同条第1項柱書)。

カ 前記イ(エ)の「措置入院」(精神保健及び精神障害者福祉に関する法律第29条)

(ア)実体的要件
措置入院の実体的要件は,以下のa.~c.です。
a. 精神障害者であること(同条第1項)
b. 医療及び保護のために入院させなければその精神障害のために自身を傷つけまたは他人に害を及ぼすおそれがあると認められること(同項)
c. 2人以上の指定医による診察及び診察結果の一致(同条第2項)

(イ)手続的要件
措置入院の手続的要件は,以下のa.~c.です。
a. 診察への都道府県職員の立会い(同法第27条第3項・第1項,第29条第1項)
b. 診察をさせるにあたって現にご本人の保護の任にあたっている者がある場合における,その者に対する診察の日時及び場所の事前の通知(同法第28条第1項,第27条第1項,第29条第1項)
c. 精神障害者に対する書面による権利告知(同条第3項)

(ウ)入院の時間制限
措置入院の場合,入院の時間制限はありません。

キ 前記イ(オ)の「緊急措置入院」(精神保健及び精神障害者福祉に関する法律第29条の2)

(ア)実体的要件
緊急措置入院の実体的要件は,以下のa.~d.です。
a. 精神障害者またはその疑いのある者であること(同条第1項)
b. 急速を要し,措置入院の手続を採ることができないこと(同項)
c. 直ちに入院させなければその精神障害のために自身を傷つけまたは他人に害を及ぼすおそれが著しいと認められること(同項)
d. 指定医による診察(同項)

(イ)手続的要件
緊急措置入院の手続的要件は,精神障害者に対する書面による権利告知です(同条第4項,第29条第3項)。

(ウ)入院の時間制限
緊急措置入院の場合,入院させることができる時間は72時間です(同法第29条の2第3項)。

(3)精神保健及び精神障害者福祉に関する法律第三十七条第一項の規定に基づき厚生労働大臣が定める基準

ア 「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律第三十七条第一項の規定に基づき厚生労働大臣が定める基準」の理解の必要性

(ア)入院者の処遇は,昭和63年4月8日付厚生省告示第130号「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律第三十七条第一項の規定に基づき厚生労働大臣が定める基準」(平成26年3月14日最終改正)に則ってなされるべきものです。
そのため,待遇改善請求に際しては,同基準を踏まえた記載が求められることから,同基準の内容を把握しておく必要があります。

(イ)同基準には,「任意入院者の開放処遇の制限について」という項目の部分を除き,以下のa.~d.が記載されています。
a. 基本理念
b. 通信・面会について
c. 患者の隔離について
d. 身体的拘束について

イ 前記ア(イ)a.の「基本理念」

同基準の基本理念として,以下の(ア)及び(イ)が記載されています。
(ア)入院患者の処遇は,患者の個人としての尊厳を尊重し,その人権に配慮しつつ,適切な精神医療の確保及び社会復帰の促進に資するものでなければならないものとすること

(イ)処遇にあたって,患者の自由の制限が必要とされる場合においても,その旨を患者にできる限り説明して制限を行うよう努めるとともに,その制限は患者の症状に応じて最も制限の少ない方法により行われなければならないものとすること

ウ 前記ア(イ)b.の「通信・面会について」

(ア)基本的な考え方
「通信・面会について」における「基本的な考え方」として,以下のa.~c.が記載されています。
a. 精神科病院入院患者の院外にある者との通信及び来院者との面会(以下「通信・面会」といいます。)は,患者と家族,地域社会等との接触を保ち,医療上も重要な意義を有するとともに,患者の人権の観点からも重要な意義を有するものであり,原則として自由に行われることが必要であること
b. 通信・面会は基本的に自由であることを,文書または口頭により,患者及びその家族等その他の関係者に伝えることが必要であること
c. 電話及び面会に関しては患者の医療又は保護に欠くことのできない限度での制限が行われる場合があるが,これは,病状の悪化を招き,あるいは治療効果を妨げる等,医療または保護の上で合理的な理由がある場合であって,かつ,合理的な方法及び範囲における制限に限られるものであり,個々の患者の医療または保護の上での必要性を慎重に判断して決定すべきものであること

(イ)信書に関する事項
「通信・面会について」における「信書に関する事項」として,以下のa.及びb.が記載されています。
a. 患者の病状から判断して,家族等その他の関係者からの信書が患者の治療効果を妨げることが考えられる場合には,あらかじめ家族等その他の関係者と十分連絡を保つて信書を差し控えさせ,あるいは主治医あてに発信させ患者の病状をみて当該主治医から患者に連絡させる等の方法に努めるものとすること
b. 刃物,薬物等の異物が同封されていると判断される受信信書について,患者によりこれを開封させ,異物を取り出した上,患者に当該受信信書を渡した場合においては,当該措置を採った旨を診療録に記載するものとすること

(ウ)電話に関する事項
「通信・面会について」における「電話に関する事項」として,以下のa.及びb.が記載されています。
a. 制限を行った場合は,その理由を診療録に記載し,かつ,適切な時点において制限をした旨及びその理由を患者及びその家族等その他の関係者に知らせるものとすること
b. 電話機は,患者が自由に利用できるような場所に設置される必要があり,閉鎖病棟内にも公衆電話等を設置するものとすること
また,都道府県精神保健福祉主管部局,地方法務局人権擁護主管部局等の電話番号を,見やすいところに掲げる等の措置を講ずるものとすること

(エ)面会に関する事項
「通信・面会について」における「面会に関する事項」として,以下のa.~c.が記載されています。
a. 制限を行つた場合は,その理由を診療録に記載し,かつ,適切な時点において制限をした旨及びその理由を患者及びその家族等その他の関係者に知らせるものとすること
b. 入院後は患者の病状に応じできる限り早期に患者に面会の機会を与えるべきであり,入院直後一定期間一律に面会を禁止する措置は採らないものとすること
c. 面会する場合,患者が立会いなく面会できるようにするものとする。ただし,患者もしくは面会者の希望のある場合または医療若しくは保護のため特に必要がある場合には病院の職員が立ち会うことができるものとすること

エ 前記ア(イ)c.の「患者の隔離について」

(ア)基本的な考え方
「患者の隔離について」における「基本的な考え方」として,以下のa.~d.が記載されています。
a. 患者の隔離(以下「隔離」といいます。)は,患者の症状からみて,ご本人または周囲の者に危険が及ぶ可能性が著しく高く,隔離以外の方法ではその危険を 回避することが著しく困難であると判断される場合に,その危険を最小限に減らし,患者ご本人の医療または保護を図ることを目的として行われるものとすること
b. 隔離は,当該患者の症状からみて,その医療または保護を図る上でやむを得ずなされるものであって,制裁や懲罰あるいは見せしめのために行われるようなことは厳にあってはならないものとすること
c. 12時間を超えない隔離については精神保健指定医の判断を要するものではないが,この場合にあってもその要否の判断は医師によつて行われなければならないものとすること
d. なお,ご本人の意思により閉鎖的環境の部屋に入室させることもあり得るが,この場合には隔離にはあたらないものとすること
この場合においては,ご本人の意思による入室である旨の書面を得なければならないものとすること

(イ)対象となる患者に関する事項
「患者の隔離について」における「対象となる患者に関する事項」として,隔離の対象となる患者は,主として以下のa.~e.のような場合に該当すると認められる患者であり,隔離以外によい代替方法がない場合において行われるものとする旨記載されています。
a. 他の患者との人間関係を著しく損なうおそれがある等,その言動が患者の病状の経過や予後に著しく悪く影響する場合
b. 自殺企図または自傷行為が切迫している場合
c. 他の患者に対する暴力行為や著しい迷惑行為,器物破損行為が認められ,他の方法ではこれを防ぎきれない場合
d. 急性精神運動興奮等のため,不穏,多動,爆発性などが目立ち,一般の精神病室では医療または保護を図ることが著しく困難な場合
e. 身体的合併症を有する患者について,検査及び処置等のため,隔離が必要な場合

(ウ)遵守事項
「患者の隔離について」における「遵守事項」として,以下のa.~e.が記載されています。
a. 隔離を行っている閉鎖的環境の部屋に更に患者を入室させることはあってはならないものとすること
また,既に患者が入室している部屋に隔離のため他の患者を入室させることはあってはならないものとすること
b. 隔離を行うにあたっては,当該患者に対して隔離を行う理由を知らせるよう努めるとともに,隔離を行つた旨及びその理由並びに隔離を開始した日時及び解除した日時を診療録に記載するものとすること
c. 隔離を行っている間においては,定期的な会話等による注意深い臨床的観察と適切な医療及び保護が確保されなければならないものとすること
d. 隔離を行っている間においては,洗面,入浴,掃除等患者及び部屋の衛生の確保に配慮するものとすること
e. 隔離が漫然と行われることがないように,医師は原則として少なくとも毎日一回診察を行うものとすること

オ 前記ア(イ)d.の「身体的拘束について」

(ア)基本的な考え方
「身体的拘束について」における「基本的な考え方」として,以下のa.~c.が記載されています。
a. 身体的拘束は,制限の程度が強く,また,二次的な身体的障害を生ぜしめる可能性もあるため,代替方法が見出されるまでの間のやむを得ない処置として行われる行動の制限であり,できる限り早期に他の方法に切り替えるよう努めなければならないものとすること
b. 身体的拘束は,当該患者の生命を保護すること及び重大な身体損傷を防ぐことに重点を置いた行動の制限であり,制裁や懲罰あるいは見せしめのために行われるようなことは厳にあってはならないものとすること
c. 身体的拘束を行う場合は,身体的拘束を行う目的のために特別に配慮して作られた衣類または綿入り帯等を使用するものとし,手錠等の刑具類や他の目的に使用される紐,縄その他の物は使用してはならないものとすること

(イ)対象となる患者に関する事項
「身体的拘束について」における「対象となる患者に関する事項」として,身体的拘束の対象となる患者は,主として以下のa.~c.のような場合に該当すると認められる患者であり,身体的拘束以外によい代替方法がない場合において行われるものとする旨記載されています。
a. 自殺企図または自傷行為が著しく切迫している場合
b. 多動または不穏が顕著である場合
c. 前記a.または前記b.のほか,精神障害のために,そのまま放置すれば患者の生命にまで危険が及ぶおそれがある場合

(ウ)遵守事項
「身体的拘束について」における「遵守事項」として,以下のa.~c.が記載されています。
a. 身体的拘束にあたっては,当該患者に対して身体的拘束を行う理由を知らせるよう努めるとともに,身体的拘束を行った旨及びその理由並びに身体的拘束を開始した日時及び解除した日時を診療録に記載するものとすること
b. 身体的拘束を行っている間においては,原則として常時の臨床的観察を行い,適切な医療及び保護を確保しなければならないものとすること
c. 身体的拘束が漫然と行われることがないように,医師は頻回に診察を行うものとすること

(4)退院請求・処遇改善請求の実際

ア 退院請求・処遇改善請求の手続の流れ

退院請求・処遇改善請求の手続は,以下の(ア)~(オ)の順になされます。
(ア)退院請求・処遇改善請求申立て及び受理
(イ)意見書の提出
(ウ)代理人による資料開示請求
(エ)審査会担当委員による現地意見聴取
(オ)精神医療審査会審査(意見陳述)・結果

イ 前記ア(ア)の「退院請求・処遇改善請求申立て及び受理」

退院請求・処遇改善請求申立書における請求する事項として「請求者を入院先から退院させることを命じる。」ことなどを,請求する理由としてその根拠を,それぞれ記載した上で,同申立書を,都道府県知事または政令指定都市市長宛てに提出します(実際の提出先は精神保健福祉センターとなります。)。

ウ 前記ア(イ)の「意見書の提出」

精神保健福祉センターから送付される意見書の書式に基づき,意見書を提出します。
なお,前記ア(ウ)記載の「代理人による資料開示請求」や前記ア(エ)記載の「審査会担当委員による現地意見聴取」の後に追加意見書を提出することも可能です。

エ 前記ア(ウ)の「代理人による資料開示請求」

(ア)平成26年1月24日付各都道府県知事・各指定都市市長宛て厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長通知(障発0124第5号)「『精神保健及び精神障害者福祉に関する法律第12条に規定する精神医療審査会について』の一部改正及び精神医療審査会の運営上の留意事項について」添付の直近改正に基づく「精神医療審査会運営マニュアル」ⅴ3(3)イ「合議体における資料の取扱いについて」において,「合議体の資料については,これを開示しないものとする。ただし,請求者が当該患者であって弁護士である代理人がいる場合に,その代理人が意見を述べるうえで必要とするときは資料を開示するものとする。」と記載されているように,弁護士が代理人である場合には資料開示が認められています。
これにより,病院(主治医)の意見書や家族の意見書の開示が得られます。

(イ)もっとも,代理人弁護士限りでの開示という扱いとなっており,患者に見せることはできません。

オ 前記ア(エ)の「審査会担当委員による現地意見聴取」

審査会担当委員による現地意見聴取には,代理人弁護士の立会いが保障されています。

カ 前記ア(オ)の「精神医療審査会審査(意見陳述)・結果」

(ア)精神医療審査会審査における意見陳述
請求者は,原則として,合議体の審査の場で意見を陳述することができます。
もっとも,請求者が当該患者である場合で,既に事前の意見聴取により充分に意見が把握できていて,合議体が意見聴取をする必要がないと認めたときには,意見陳述をすることができません。
しかし,請求者が患者の場合で,当該患者が当該代理人による意見陳述を求めた場合には,合議体は,当該代理人に審査の場で意見を述べる機会を与えなければなりません(以上,前掲「医療審査会運営マニュアル」ⅴ3(2)ウ「関係者の意見陳述について」参照)。

(イ)退院請求の結果
退院請求における結果は,以下のa.~e.のいずれかとなります(前掲「医療審査会運営マニュアル」ⅴ3(4)ア「退院の請求の場合」参照)。
a. 引き続き現在の入院形態での入院が適当と認められること
b. 他の入院形態への移行が適当と認められること
c. 合議体が定める期間内に,他の入院形態へ移行することが適当と認められること
d. 入院の継続は適当でないこと
e. 合議体が退院の請求を認めない場合であっても,当該請求の処遇に関し適当でない事項があるときには,その処遇内容が適当でないこと(この場合には理由の要旨が付されます。)

(ウ)処遇改善請求の結果
処遇改善請求における結果は,以下のa.またはb.となります(前掲「医療審査会運営マニュアル」ⅴ3(4)イ「処遇の改善の請求の場合」参照)。
a. 処遇は適当と認めること
b. 処遇は適当でないこと,及び合議体が求める処遇を行うべきこと

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